いとこ ~2度目の初恋~

教室に入って空気が違う事に気づいた。
 みんなが俺をチラチラと見てくる、何人かは笑っているようにも見えた。また顔に食べかすが付いているのかと、汗を拭うフリをしながら口元を拭った。


「なあ! お前東雲とつき合ってるって本当?」


クラスメートの田辺が俺を見るなりいきなり肩に手を回してきた。そして、小声で言われたその言葉に驚愕した。


『はあー? 誰がそんな事』


「誰って、俺と妹。今日も二人仲良く登校してきてたし」


ニヤニヤと不気味な笑顔を向けてくる田辺は、「つき合ってる」と言うのを待っているようだった。


「どうなんだよ!なあ」


急かす田辺に深く長いタメ息をつき、ハッキリと普段より低い声で『付き合ってねぇーよ』と田辺の腕を振り払い、自分の席にまっすぐ歩いた。


 「でも、偶然会ったからって一緒に帰るかよ普通!!」


諦めの悪い奴。バカなのか?そんなに恋の噂話がしたいなら、女子に混ざってキャーキャー言ってろ!!と言いたかったが、冷静に言葉を返した。


『じゃあ、田辺は友達じゃない奴に偶然会っても、話しかけずに帰るんだな?』


「えっ……だって普通」


『普通って何だよ? もし、お前が言うように俺と東雲の関係が友達以上と考えるのが普通だって言うなら、俺も今度から田辺と帰った奴をデキてるんだって思うようにするよ』


 言い切ると田辺の顔色と教室の空気が変わった。
喉がゴクリと動き、「な、なんでそうなんだよ!?」とかなり動揺していた。


『だって、お前の言ってる事ってそういう事だろ?』


「うっ……」


「田辺の負けだな! 様子からして、晴斗様は東雲とつき合ってないみたいだし? 勘違いしたお前が悪い」


 どこに居たのか、冷静に喋りながら田辺の隣に来たのは、頭の回が早く理解力のある水沢だった。
 ガキのまんま育った田辺と、本ばかり読んでいたと言う水沢が幼なじみな事が未だに信じられなかった。


「田辺ちゃんと謝れ。 それと、撒いた種の後始末も自分でしろよ?」


「変な噂流して、ごめんなさい。」


素直に謝る田辺の声が、ざわめく教室に木霊した。