それから3日が経ち、すっかり元気になった秋を家に帰し、部屋に戻ると窓を開けていたせいか、ひんやりとした空気が足元を流れていった。
 『この部屋、こんなに広かったっけ?』そう感じるほど秋がいなくなった部屋が広く見えた
 ────翌朝。疲れていたのか、目覚ましが鳴っても気づかなかった。
 久しぶりに友紀ちゃんに起こされ、寝ぼけ眼で時計を見て慌てて布団を出ると、着替えながら洗面所に向かった。


『最悪だ』


 寝癖の付いた髪を直し顔を洗い、歯磨きをしながら友紀ちゃんにネクタイを締めてもらった。


「サンドイッチにしてあるから、食べながら行きなさい」


『ん、ありがとう』


 部屋にカバンを取りに戻り、一階に降りてサンドイッチを掴むと、傘を片手に家を飛び出した。


『いってきます!』


秋の家の前を通った時、誰かに呼ばれた気がした。


「晴斗くん!!」


『へ?』


 振り返ると、窓から顔を出した夏子さんが雨音にも負けない声で俺を呼んでいた。


『なにしてるんですか?』


窓に近寄り尋ねると、俺を見てつい声を掛けてしまったと言われた。


『そうですか』


苦笑いしながら、急いでると言えない自分が情けない。
 そんな俺に夏子さんが謝ってきた。


「迷惑かけちゃってごめんなさいね?」


『いえ。 あの、秋は先に行ったんですか?』


俺の問い掛けに、思い出したように「そうそう」と言った


「今日は休ませる事にしたの。念のためね!」


『あ、そうですか』


「本当にごめんなさいね?先生には言ってあるから。 急いでるのに、足止めしちゃってごめんね?」


『いえ、大丈夫です。じゃあ、失礼します』


頭を下げ、秋の家を後にした。


「いってらっしゃい」


夏子さんに見送られ、走りながら(早くよくなれよ)と秋にメールを送った。
 少し経ってから(Re:俺の風邪は、お前の家に置いてきたから、元気だよ♪)と返ってきた。


『フッ』


急いでいた為、それに対してのメールは返さなかった────