ニタニタ笑いながら、わざとらしく後ろを振り向く秋にイライラしていた。


『秋、楽しいか?』


「うん、晴斗をからかうのすっごい楽しい」


『いやそうじゃなくて、ただ単純に生きてて楽しいか?』


「なんだそれ? まあ、楽しいかな? 少なくともお前よりは楽しんでるよ」


『そうか……』


突然の質問に戸惑う秋の横で、俺はあの少女を思い出していた。どうしたらあんなに楽しそうに出来るんだろう?
 秋に(水溜まりを見ても楽しいか?)と訊こうとしてやめた。
からかわれるのがオチだ。


「そうだ、今日お前んちの親いる?」


『いるけど』


「よかった~、今日からゴチになりま~す!」


『また家出か?』


「だから、旅行を家出って言うのいい加減止めろよ! お前のせいで俺、可愛そうな子になってんだぞ?!」


『実際そうだろ』


「だから──」


 秋とは産まれた時から一緒だった。元々親同士が異常なほど仲良しで、俺達が産まれる前から4人で色んな国に旅行に行っていたまではいいが、同じタイミングで子供を授かったと聞かされた時には流石に引いた。
 小さい頃は喜んで一緒に旅行に行ってたけど、中学に入ってからはそれもなくなった。
 まあ、そんなことは両親には関係ないらしく、暇を作っては今でも旅行に出掛けている。