『嫌いじゃないよ?』


「っ……」


『友達として……』


なんて残酷な事をしてるんだろう?
これ以上自分を好きにならないように傷つけて、悲しい顔がみたい訳じゃないのに……
どうして東雲と顔を合わせるといつもこうなるんだろう?
間に秋が居ないとまともに会話が出来ないなんて……


「友達としてでも嬉しいです。」


『ごめん』


「謝られると惨めになるので、やめてください。」


『あ、うん。……泣いてる?』


「ううん。……私が泣たらダメですか?」


『ダメじゃないけど、笑顔の方が好きだから……──』 


 ふと目の前にコンビニの看板を見つけ、秋の「アイス」と言った声が聞こえた。


『あ、ちょっとコンビニ寄っていい?』


「はい。……無意識ってズルい」


『ん?』


「いえ。」


コンビニに着くと、東雲は傘を畳まず「私、ここで待ってます」と言った。


『……でも』


「ちゃんと見える所に居るので、なるべく早くお願いしま~す!」


 一方的に言われ、まさかの事態を考え不安がる俺の背中を押し、無理矢理店の中へ押し込まれ、転びそうになった俺を見て手を振って見せた。


『ハァー……』


東雲を気にしつつも、頼まれたアイスを探した。 店の外では東雲が中を覗き込み笑っている。


『フッ、子供か。あ、あった』


 アイスを取り、空いている方のレジに並んだ。その間も東雲が気になり、何度も出口を見てしまう。
 アイスの表面の氷が手の中で溶け、水滴になって落ちるたび、早くしてくれと心の中で呟いた。


「お待たせしました」


やっとあいたレジにアイスと代金120円を置いた。
レジを打つ店員の動作がゆっくりに見え、苛立ってしまう。


「レシートとお品物になります」


袋を受け取り、レシートをポケットに突っ込み足早にコンビニを出ると、東雲は背を向けクルクルと傘を回しながら待っていた。
 不規則に回る傘を見ていると、楽しそうに水溜まりで遊んでいた黄色い傘の少女を思い出す。
 名前を呼ぶと、振り向き様に傘を渡された。


『あ、ありがとう』


 そこからの道すがら、東雲は一言も喋らず、俺からも喋り掛けることはなかった。