一人また一人と客が出入りするのを見ながら、見失わぬよう目を凝らした。
 雨足が強くなり始めた頃、また一人店から出てきた。
傘立てからピンクの花柄模様の傘を抜くと、一つ息を吐く。その横顔が東雲に似て、いて気づいたら声をかけていた。


『あの!』


呼び止めた声は雨にかき消され、その人には届かなかったものの、やっぱり東雲だ!と変な確信があった。


『東雲!』


 追いかけ呼び止めると、振り向いたその人はやっぱり東雲で驚き固まっていた。
泣いていたのか、潤んだ瞳が赤かった。


『あの、さっきはごめん』


東雲がしたように頭を下げた。


「えっ、あっ頭上げてください!」


『本当にごめん……。』


「もしかして、それを言うために待ってたんてすか?」


『うん、ちゃんと謝りたくて』


東雲は微笑み、「そう言うところ、好きです」と真っ直ぐ俺を見た。


『あ、ありがとう』


あまりにも自然な二度目の告白に、ドクンッと心臓が脈打った。
 その後、我に返った東雲は顔を赤くしもじもじしながら「い、一緒に帰ってもいいですか?」言った。


『別にいいけど……また敬語になってる』


「あ、ごめんなさい。まだ慣れなくて……」


一歩先を行く東雲とは傘を差しているぶん少し距離はあるものの、それでも嬉しそうに隣を歩く笑顔を可愛いと思った。