──薬局で風邪薬と飲料水を選んでいると、肩を叩かれた。振り返ると、そこには少しハニカんだ笑顔の東雲がいた。


『東雲!?』


「よかった間違ってなくて。買い物ですか?」


毎日のように会ってるのに、何でこんなに気まずいんだろう?


『うん』


「私も」


ぎこちない会話を重ねながら、ポツリポツリと会話は進んだ。


「妹が、熱だしちゃって。両親が共働きだから、私がお母さん代わりっていうか……。」


『そうなんだ』


小さく頷く東雲に、『大変だな』と声を掛けると、微笑みながら言った。


「そうでもないよ?嫌になる時もあるけど、楽しい事もたくさんあるし。なんだかんだ言って妹が居ないと寂しいのは私だったりするし……」


照れながらも顔は、しっかりした姉の顔になっていた。


「晴斗くんは……風邪?」


カゴの中を覗き、首を傾げた。


『ああ、これは秋が熱だして、風邪薬がなかったから買いに』


「長門くんが?」


『うん』


久しぶりすぎて直ぐに秋の苗字だと気づかなかった。
 変な沈黙が続き、気まずいこの状況をなんとかしないとと頭をフル回転させてみたところで、なにかが浮かぶはずもなく、逆に東雲に気を遣わせてしまった。


「なんか、気まずいね? 毎日顔合わせてるのに、なんでだろう?……私服だからかな?」


無理して笑ってる。
 こんな時に浮かぶのは秋の顔で、きっとアイツなら東雲にこんな顔をさせないんだろうなぁなんて、つい考えてしまう。


『アイツが居たら、こんな空気にもならないんだろうけど……』


「アイツ?」


『秋がいたら、って比べる癖がついてて……』


なんてはぐらかしたけど、東雲が哀れむような目で俺を見ている気がして、分かりやすく目を逸らしてしまった。