扉が閉まり、静まり返った玄関先で友紀ちゃんが振り向き様に謝ってきた。
『話しちゃったのか』
「夏子にはどうしてもバレちゃうのよね……」
『いつかバレる事だからいいけど、それより風邪薬あるかな?』
「風邪薬?どうだったかなぁ」
頬に手をあて、リビングに戻る後ろをついていくと、食器棚の前で「あら……?」と言う声がした。
『もしかして』
「無いみたい。晴斗めったに風邪引かないから、買い置きがないみたい」
さすがに苦笑いしかでない。
『結局こうなるか、薬買ってくるけど、なにか要る?』
「ん~……ゼリーとか、プリンとか食べやすいものと、秋くんが欲しい物を買ってきてあげたら?」
『ん、分かった。あ、秋にお粥お願い』
「はいは~い」
────財布を取りに部屋に戻ると、出しっぱなしにしていた卒業アルバムを見ていた。
「やっぱ出掛けるの?」
財布をお尻のポケットに押し込んでいるのを見た秋がそう聞いてきた。
『風邪薬買ってくる。俺があまりにも風邪を引かないから、買い置きがないらしい』
「まじか」
『マジだよ。欲しいものあったら買ってくるけど?』
「んー……」
『アイスとか飲み物とか?』
「あ~、カップアイスのバニラが食べたい」
『他には?』
「ハニーレモン。」
『それだけ?』
うんうんと頷く秋は、漸く強がりを止めたらしい。声を出すのも辛くなってきたのか、急に大人しくなった。
『じゃあ、行ってくる』
「うん」
『ちゃんと寝てろよ?』
頷くのを見た後部屋を出た。
これ以上酷くならなきゃいいけど。
マスクを外しポケットに突っ込みながら、ふと夏子さんが来たときのことを思い返していた。
あの時、俺、マスクどうしてたっけ?
『もしかして、俺がバラしてた』
別の事に気をとられ過ぎて肝心な事を隠し忘れていた事に気づき、友紀ちゃんに胸の中でそっと謝った。
『──行ってきます』
「うん、気をつけてね?」
玄関のドアを開けると、雨が輝いて見えた。きっと、そう見えたのは俺だけで、この雨音が心地よいと感じるのも俺だけなんだろう。
傘を差し雨の中に飛び込むと、黒いアスファルトを早足で歩いた。
『話しちゃったのか』
「夏子にはどうしてもバレちゃうのよね……」
『いつかバレる事だからいいけど、それより風邪薬あるかな?』
「風邪薬?どうだったかなぁ」
頬に手をあて、リビングに戻る後ろをついていくと、食器棚の前で「あら……?」と言う声がした。
『もしかして』
「無いみたい。晴斗めったに風邪引かないから、買い置きがないみたい」
さすがに苦笑いしかでない。
『結局こうなるか、薬買ってくるけど、なにか要る?』
「ん~……ゼリーとか、プリンとか食べやすいものと、秋くんが欲しい物を買ってきてあげたら?」
『ん、分かった。あ、秋にお粥お願い』
「はいは~い」
────財布を取りに部屋に戻ると、出しっぱなしにしていた卒業アルバムを見ていた。
「やっぱ出掛けるの?」
財布をお尻のポケットに押し込んでいるのを見た秋がそう聞いてきた。
『風邪薬買ってくる。俺があまりにも風邪を引かないから、買い置きがないらしい』
「まじか」
『マジだよ。欲しいものあったら買ってくるけど?』
「んー……」
『アイスとか飲み物とか?』
「あ~、カップアイスのバニラが食べたい」
『他には?』
「ハニーレモン。」
『それだけ?』
うんうんと頷く秋は、漸く強がりを止めたらしい。声を出すのも辛くなってきたのか、急に大人しくなった。
『じゃあ、行ってくる』
「うん」
『ちゃんと寝てろよ?』
頷くのを見た後部屋を出た。
これ以上酷くならなきゃいいけど。
マスクを外しポケットに突っ込みながら、ふと夏子さんが来たときのことを思い返していた。
あの時、俺、マスクどうしてたっけ?
『もしかして、俺がバラしてた』
別の事に気をとられ過ぎて肝心な事を隠し忘れていた事に気づき、友紀ちゃんに胸の中でそっと謝った。
『──行ってきます』
「うん、気をつけてね?」
玄関のドアを開けると、雨が輝いて見えた。きっと、そう見えたのは俺だけで、この雨音が心地よいと感じるのも俺だけなんだろう。
傘を差し雨の中に飛び込むと、黒いアスファルトを早足で歩いた。