いとこ ~2度目の初恋~

卒業して2年と経っていないのに、どうしてこんなに懐かしいと思ってしまうんだろう?
 ページを捲る度、その時の風景や匂いが甦り、また懐かしいと呟きそうになった。どの思い出も俺にとっては退屈で、つまらないと想っていた頃の自分は、少しも変わらずに今に存在する。
 その思い出の楽しいと思える記憶の中心には、いつも秋がいた。
クラスが離れた時も、一人屋上でお昼を食べていた日も、必ず探し当て隣に居た。


『うわぁ、酷すぎる』


顔が引きつるほど、卒業写真の中の自分は暗かった。写真を撮る時「笑ってください!」と何回言われただろう?『オモシロい事をしてくれたら笑います』そんなやり取りを唯一、秋だけが腹をかかえて笑っていた。
 撮る側も撮られる側も楽じゃないと、ため息をつくと、「晴斗、笑ってやれって!!」とさらに大声で笑っていた。
 結局、時間が無いからと俺だけ真顔の写真になった。


『うわ、すごい笑顔……』


クシャクシャな顔でピースをする秋の写真に、思わず笑みがこぼれた。


『俺、笑い方まで忘れたのかな?』


蒸れ始めたマスクのズレを直しながら、卒業アルバムを閉じた。
 曇ったままの空は、焦らして雨を落とすのを躊躇ってるのか、一向に降り出してはくれなかった────。