秋が落ちないよう時々背負い直しながら、秋の家の手前まで来て今朝とは違う違和感に気づいた。朝通った時、確かに何もなかった秋の家に、赤い車が止まっていた。


『帰ってきたんだ』


自然と止まった足を動かし、秋の家を過ぎようとした時、秋が目を覚ました。


『悪い、起こしたか?』


「着いた……の?」


言葉が途切れ、沈黙が続いた。


『……帰ってきたみたいだ。』


「今日も、晴斗の家泊まっていい?迷惑なのは、分かってるんだけど……」


『俺はいいけど』


 ハァーと苦しそうな息を吐くと、ありがとうと呟きまた眠ってしまった──
 無言でその場を通りすぎ、短い階段を上がり、玄関を開けてまず靴をチェックした。秋の両親が来てるかもしれないと思ったけど、その心配はまだ要らないようだった。
 鞄を置き、おぶったまま靴を脱がすと、一息ついて自分も脱いだ。
いつもなから気づいて顔を出す友紀ちゃんが今日に限って出てこず、不審に思いながらも階段を上がった。
 ──秋をベッドに寝かせ、上着とネクタイ、ボタンを2つ外すと布団を被せた。


「ごめっ……」


かすれた声で謝る秋に寝てるよう言い残し、部屋を出た。
友紀ちゃんに事情を話し、泊めてもらえるよう頼むため一階に下りると、リビングから話し声がした。
 一瞬にして不安に包まれ、心臓がバクバクと動き出し手汗が滲んできた。
恐る恐るドアを開けると、そこには友紀ちゃん以外誰も居なかった。