「ありがとう」にうんと頷くと、スミレは友紀ちゃんの元に行ってしまった。
 取り残された俺にはドキドキだけが残り、テレビの前に座りボーッとしている秋の元へ近づいた。


『おもしろいか?』


話しかけながらソファーに座ると、テレビの前から「んー……」と唸る声がした。
 秋が観ていたのは、夕方のニュース番組だった。毎日流れる事故や事件のニュースを、秋はただボーッと見ていた。


「明日の天気をお伝えします……」


 天気予報を聞きながら、キッチンへ目を向けると楽しそうに夕飯を作る2人の姿があった。
 羨ましげにその光景を見ていると、スミレと目が合った。
微笑むスミレの視線はすぐにそれ、なぜか胸の奧が苦しくなった。


「お前、まだ好きなんだ」


『ん?』


テレビを観ていたハズの秋は、俺を見てもう一度繰り返した。


「まだ好きなんだ、スミレの事」


キッチンを見る秋に東雲を思いだし、言葉に迷う。


『分かんないけど、多分……』


 秋の後ろに視線を上げると、ニュース番組はいつの間にかバラエティー番組に変わっていた。
 ──7時を5分ほど過ぎた時、友紀ちゃんの「ご飯できたよ~!」の声が響き、俺達は少し遅めの夕飯を食べた。