『うわっ!ちょっなに!?』


後ろを付いてきたスミレに髪の毛をクシャクシャにされ、振り返ると嬉しそうに笑いながら、俺を見てハニカンだ。
 乱れた髪を直し廊下を歩く後ろを付いて来るスミレは、鼻歌を口ずさみ始めた。


「ねぇ、秋とは今どうしてる?」


どうしてる?


『相変わらずだけど』


「ケンカしたまま?」


『ケンカ?いつの話し?』


「だよね~、ごめんごめん!それで」


スミレの言ってる意味が理解できず、またモヤモヤが襲ってきた。少し痛む頭がイライラを煽る。


『そんなに秋が気になるなら、自分の目で確かめれば?』


「え?いや……」


『もう帰ってくると思うし』


気まずそうに目をそらすスミレは、戸惑ってるようにも見えた。


『今も、秋の事ばっかなのな……』


「え?」


『なんでもない』


 ここ最近色んな事がありすぎたから、可笑しくなってるんだ。そう思い込む事にした。


『俺、多分大事な事忘れてる』


「大事なこと?」


『さっきから思い出せなくて。何を忘れたのかも分からないし、さっき……』


頭痛の事を言いかけ止めた。
心配かけたくなかったし、スミレには関係ない情報だと勝手に決めつけ話を変えた。


「ハル?」


『そうだ、秋に会いたくないなら俺の部屋にいても構わないし』


明るく振る舞う自分を、懐かしい感覚が襲い、(何言ってんの? 分かってるってそんくらい!!)蘇った記憶の自分は何かに怒っていた。