いとこ ~2度目の初恋~

 秋の家の前を過ぎるとき、無意識に部屋の明かりが点いているか確認していた。
 まだ帰ってないのかな?それとも、もう寝てた?


『着いた……。』


 明りの点いた我が家を見た途端、緊張の糸が切れ一気に疲れがのし掛かってきた。
『ただいま』の声に反応してリビングから友紀ちゃんが顔を出した。


「お帰りなさい!もっと遅いかと思ってたけど……」


『俺とスミレは会場まで行かなかったから。二人とは帰りにばったり。
 えっと、母の友紀ちゃん。で、友達の水沢と彼女の陽向さん』


 それぞれ紹介し隣を見ると、水沢が目を丸くし、さらにその後ろでは先生が顔を赤くしていた。
 ──3人を自分の部屋に案内すると、扉を閉めた瞬間二人が迫ってきた。


「彼女って……!」


「陽向さんって……、先生だって紹介してくれればいいのに!!」


『先生だなんて言ったら花火どころじゃないですよ。っていうか、先生″彼女″には反応しないんですね?』


「えっ……!?」


驚く先生と少し期待している水沢に向かって『少し休んでから花火でいいですか?』と訪ねると、わざとらしくタメ息をついた。
 そんな二人を微笑ましく思いながら、ベットに座っているスミレの隣に腰を下ろした。


『寒くない?』


「うん、大丈夫」


 口ではそう言っていたけど、指先が冷えているのを知ってる。少しは甘えてくれても良いのに……。
 ため息を吐き、クローゼットから長袖のシャツを出すとスミレに掛けた。
 ──コンコンッ
部屋をノックする音に全員が扉を見る。 


『はい』


ドアを開けると友紀ちゃんがホットドリンクを持って立っていた。


「寒かったでしょ?」


お盆をテーブルに置き、先生の方へ近づくと体を包むように小脇にか変えていたストールをかけた。


「晴斗はスミレちゃんしか見えないから、持ってきて正解ね?変に気が利かない所なんかお父さんそっくり」


『うっ……飲み物ありがとう』


 ぶっきら棒な言い方に、スミレと友紀ちゃんが顔を見合わせ笑っている。


『──友紀ちゃん、このあと庭で花火してもいいかな?』


友紀ちゃんは時計を見遣り、「静かにね?!」と言い残し去って行った。
 扉が閉まった瞬間、水沢と先生が一気に息を吐いた。


「びっくりしたぁ……」


その場にへたり込む先生は、ストールを握り微笑んだ。


「暖かい……」