いとこ ~2度目の初恋~

  帰りの通学路を歩いていると、さっきまで誰もいなかった道が、花火が終わり帰る人で賑やになっていた。
 その人混みの中に、水沢と先生を見つけ、向こうも俺たちに気づき安堵の表情を浮かべた。


「どこ行ってたの?」


眉間にシワを寄せ首をかしげる水沢に『学校を見たいって言うから、行ってきた。』


「そう。秋達は一緒じゃないの?」


『神社までは一緒だったけど、そのあとは会ってないよな?』


「うん。」


スミレが頷き、再び水沢が首をかしげた。
 そういえば、二人どうしたんだろう?


「俺たちは会場近くにいたけど、見つかったら奇跡な人数だったし」


よろけた事を思い出したのか、顔がひきつっていた。


『二人はこれから帰るの?』


「え?うん、まあ。」


『じゃあ、ちょっと家に寄って行かない?』


「いや、遠慮しとく」


『もらった花火やらないともったいないし、二人じゃ多いから手伝え』


「え?いや、っておい晴斗!」


 無理やり水沢の腕を引き、家へと向かった。


「わかった、行くから離せ!」


『……途中で逃げないとも限らないし』


「逃げないから離せよ!恥ずかしいんだって!」


後ろをチラリと見て俺に目配せをした。


『……しょうがない。』


渋々離すと、ため息をつきながら隣を歩いた。


『俺、告白してきた。』


肩が少し動いて「そっか」といつものトーンで返事が返ってきた。


『付き合うことになった。』


2度目の「そっか」は嬉しそうだった。


『ありがとうな?』


「俺はなにもしてない」


『スミレは話してくれなかったけど、俺の為だったんだろう?
危機一髪のキス作戦』


「変なタイトル付けんなよ」


『できたことを表現するにはぴったりのネーミングだと思って』


笑ったら呆れた顔で睨まれた。


「晴斗って根にもつタイプだろ?」


『さあ?自分の事はよく分からないけど、そうかもな』


「……お前すごいよな。」


『ん? なにが?』


「うまく言えないけど、すごいよ。
俺は頑張って背伸びしても陽向には届かないから。
 そんなの初めから知ってたはずなのに、時々他の先生と楽しそうに話してるのを見るとさ思うんだよ。
お似合いだなぁ思ってさ……。」


空を見上げ、ため息をついた。


『それ分かる。ずっとそうだったから』


「フッ……俺さ、陽向以外の人を好きになろうとしてみたんだけど、やっぱダメだった。
 自分を騙してまで誰かを好きになろうとしてる自分が嫌で。陽向の顔が見れないほど罪悪感で一杯でさ、なんかイケナイ事してるみたいですごい嫌だった。
 おかげで嫉妬深くて、素直になれないひねくれた奴になっちゃった……。」


『それでも気持ちは伝わってるからいいと思うけど……?』


 どうしてこんな会話になったのか、ふと後ろを見ると恥ずかしそうに俯く二人と目が合った。堂々と好きな人の前で話してたらそうなるよな?
 二人に苦笑すると水沢に向き直った。
 ────暫く歩くと見慣れたT字路が街頭に照され、家が近い事を知らせていた。
 秋と東雲は今頃何をしているんだろう?
そんな事が一瞬よぎり、T字路を通り過ぎたあたりで消えていった。