いとこ ~2度目の初恋~

 緊張しながら職員室の扉を開けると、数人の先生と目があった。
 中に入り、事情を話すと今日だけ。との約束で校内を歩くことを許可してくれた。
 職員室を出ると、壁にもたれ待つスミレが心配そうな視線を向けてきた。
それに微笑むと、安堵のため息をついた。


『少しだけなら良いって。』


「なんか緊張する~」


そう笑いながら胸に手を当てるスミレは、少し震えているようにも見えた。
 黙って手を差し出すと、すんなり返って来る仕草が愛しい。
 ──教室の明かりを街灯代りに廊下と階段を進み、毎日過ごしている教室まで来た。
 なんか複雑な気分。東雲に告白された場所にスミレがいるなんて……


「ハルの席はどこ?」


無邪気に聞いてくるスミレを自分の席へと案内した。


『ここ。一番後ろの窓際が俺の席』


「いい席だね?」


『空が見えるから退屈しないけど、温かくて眠くなる』


「フフッ、ちゃんと勉強してる?」


『してるほうだと思う。』


 暇さえあればスミレの事を考えてる。そんな事を言ったらどんな反応をするんだろう?楽しそうな横顔を見ながら、そんなことを思っていると
 ──ド~ンッ!!!
不意に聞こえた音に廊下を見た。
 窓が閉まってるせいか、花火の音が少籠って聞こえる。


「花火、見えるかな?」


見るとスミレも廊下を見ていた。


『見える場所、探してみるか?』


「うん!」


 嬉しそうに笑うスミレの手を引き、来た道の先を進み、階段を上がりながら窓から見える景色の中に花火を探した。