いつまでこんな事をするんだろう?
『はぁーヤキモチ焼いたらお腹すいた。食べ物買いに行くけど、スミレも来る?』
「行く」
手を差し出すと、素直に手を伸ばした。
「暖かい」
『スミレが側にいるからだよ。俺の手が熱いのも、ドキドキするのも、ヤキモチ焼くのも全部スミレだから……なんてな』
「最後の余計……」
『全部スミレだから……。これでいい?』
嬉しそうに笑う顔を恥ずかしそうに隠す仕草になぜだか泣きそうになった。
──人もまばらな境内を歩き、ボーッと考え事をしていたせいで、秋達とすれ違った事にも気づかず、目当ての屋台も通りすぎた事にすら気づかなかった。
「晴斗どこまで行くの?屋台過ぎたよ?」
そう言われ我に返ると、階段の前に立っていた。苦笑し来た道を戻りながら、スミレの横顔を横目に見た。
「ハル、なに食べるの?」
振り向いたスミレと目があって、ドキッと心臓が跳ねる。
『焼きそば……屋台のおいしいから』
その時、ヒュ~っと花火がうち上がる音が微かに聞こえ、そのあとにド~ンッと大きな音が轟き空気が震えた。
「花火始まっちゃったね」
空を見上げるスミレにつられて俺も空を見た。
風に乗って流れてくる煙と火薬と屋台の匂いが、俺を記憶の中へと押し戻す。
毎年少しづつ増える思い出の中のスミレは、殆どが後ろ姿で、俺を気にかけ振り返る姿しか覚えていない。
思えば記憶の中のスミレは大半が後ろ姿で、その隣にはいつも秋がいた。
「夏!って感じ。」
『うん』
今年は、スミレの横顔と俺だけを見てくれる瞳が思い出になる。
焼きそばを買い、東雲達と合流して、まだ遊びたいと言う飴のワガママに付き合う二人を残し、漸く神社を出た。
「秋と東雲さん、楽しそうでよかった。
ハルが言った事何となくわかった気がする」
『秋の気持ち届くといいんだけど……』
よかった。ホッとした。
それは本心なのに、まだどこかで東雲を傷つけてるような気がして少し辛い。
二人がうまくいけばいいのに、なんて自分勝手過ぎて笑えてくる。
『どうして俺ってこうなんだろう?』
ため息混じりに言った独り言を、スミレは黙って流してくれた。
『どうする?』
行き先も決まらず、神社の前にある公園に入り、ベンチに座って焼きそばを食べながら訊いた。
「なにが?」
『花火。どこで見る?』
「ああ……」
『早くしないと終わっちゃうよ?』
悩むスミレの口から出た言葉は、「散歩がしたい」だった。
『さんぽ?』
「うん、どうしても花火が見たいってわけじゃないし、晴斗ともっと話しがしたいから……さんぽしながら見える場所見つけるのも良いかなって?
花火大会の記憶って秋と話したって事しかなくて、ハルと話したいのにいつも後ろの方でおとなしくしてたから……」
『俺まで並んだら迷惑かなって……スミレ楽しそうにしてたし。それに、あの頃は後ろから見てるだけで十分だったから。』
やけに眩しい満月が、スミレの表情を露にする。
潤んだ瞳が逸らすことなく俺を見ている。
「今は?」
なんとなく予想してた言葉に、口元が緩む。
『今は……隣歩きたいし、ちゃんと正面から見たい。ってすごいワガママな事ばっかり考えてる。もう叶ったけど……』
照れ隠しで焼きそばを口一杯頬張る俺を見てスミレが笑った。
こんな事ばかりしているから、このままでいいなんて思うのかな?
絶対大丈夫だって確信があるのに、それを実行に移せないのは、些細な出来事が幸せ過ぎて壊したくないと思っているから。
なんて言い訳をあと何百回繰り返すんだろう?
ため息と共に焼きそばを飲み込み、手を合わせ『ごちそうさま。』をした。
『じゃあ、行く?散歩』
「うん!」
食べ終えたゴミをゴミ箱に投げ、公園を後にした。
花火が上がるたび、離れていた体が少しづつ近づいていく。
「どこまで行こうかな?」
『スミレが行きたい所まで付き合うよ。決まってるならだけど』
「行ったことがない場所がいいな。晴斗がぶたん遊んでる場所とか、よく通る道とか……?」
『秋みたいに寄り道しないからなぁ……』
「はい!通学路がいいですっ!」
手をあげて、満面の笑を浮かべるスミレに拍子抜けしてしまう。
『通学路?!』
「ダメかな?」
『いや、ダメじゃないけど、本当それでいいの?』
「うん。どんな道を通ってるのか見てみたいし、高校も見たい。」
『……じゃあ、手繋いどかないと。』
「えっ?!」
『暗いし、はぐれたら危ないから。
昼間の明るい時ならいくらでも案内するんだけど、時間ないしね?』
照れながらも重ねる手をぎゅっと握り、握り返された感触に胸が苦しくなる。
この感覚は嫌いじゃない。
キュンッと胸が詰まる度スミレを近くに感じることが出きるから……。
『はぁーヤキモチ焼いたらお腹すいた。食べ物買いに行くけど、スミレも来る?』
「行く」
手を差し出すと、素直に手を伸ばした。
「暖かい」
『スミレが側にいるからだよ。俺の手が熱いのも、ドキドキするのも、ヤキモチ焼くのも全部スミレだから……なんてな』
「最後の余計……」
『全部スミレだから……。これでいい?』
嬉しそうに笑う顔を恥ずかしそうに隠す仕草になぜだか泣きそうになった。
──人もまばらな境内を歩き、ボーッと考え事をしていたせいで、秋達とすれ違った事にも気づかず、目当ての屋台も通りすぎた事にすら気づかなかった。
「晴斗どこまで行くの?屋台過ぎたよ?」
そう言われ我に返ると、階段の前に立っていた。苦笑し来た道を戻りながら、スミレの横顔を横目に見た。
「ハル、なに食べるの?」
振り向いたスミレと目があって、ドキッと心臓が跳ねる。
『焼きそば……屋台のおいしいから』
その時、ヒュ~っと花火がうち上がる音が微かに聞こえ、そのあとにド~ンッと大きな音が轟き空気が震えた。
「花火始まっちゃったね」
空を見上げるスミレにつられて俺も空を見た。
風に乗って流れてくる煙と火薬と屋台の匂いが、俺を記憶の中へと押し戻す。
毎年少しづつ増える思い出の中のスミレは、殆どが後ろ姿で、俺を気にかけ振り返る姿しか覚えていない。
思えば記憶の中のスミレは大半が後ろ姿で、その隣にはいつも秋がいた。
「夏!って感じ。」
『うん』
今年は、スミレの横顔と俺だけを見てくれる瞳が思い出になる。
焼きそばを買い、東雲達と合流して、まだ遊びたいと言う飴のワガママに付き合う二人を残し、漸く神社を出た。
「秋と東雲さん、楽しそうでよかった。
ハルが言った事何となくわかった気がする」
『秋の気持ち届くといいんだけど……』
よかった。ホッとした。
それは本心なのに、まだどこかで東雲を傷つけてるような気がして少し辛い。
二人がうまくいけばいいのに、なんて自分勝手過ぎて笑えてくる。
『どうして俺ってこうなんだろう?』
ため息混じりに言った独り言を、スミレは黙って流してくれた。
『どうする?』
行き先も決まらず、神社の前にある公園に入り、ベンチに座って焼きそばを食べながら訊いた。
「なにが?」
『花火。どこで見る?』
「ああ……」
『早くしないと終わっちゃうよ?』
悩むスミレの口から出た言葉は、「散歩がしたい」だった。
『さんぽ?』
「うん、どうしても花火が見たいってわけじゃないし、晴斗ともっと話しがしたいから……さんぽしながら見える場所見つけるのも良いかなって?
花火大会の記憶って秋と話したって事しかなくて、ハルと話したいのにいつも後ろの方でおとなしくしてたから……」
『俺まで並んだら迷惑かなって……スミレ楽しそうにしてたし。それに、あの頃は後ろから見てるだけで十分だったから。』
やけに眩しい満月が、スミレの表情を露にする。
潤んだ瞳が逸らすことなく俺を見ている。
「今は?」
なんとなく予想してた言葉に、口元が緩む。
『今は……隣歩きたいし、ちゃんと正面から見たい。ってすごいワガママな事ばっかり考えてる。もう叶ったけど……』
照れ隠しで焼きそばを口一杯頬張る俺を見てスミレが笑った。
こんな事ばかりしているから、このままでいいなんて思うのかな?
絶対大丈夫だって確信があるのに、それを実行に移せないのは、些細な出来事が幸せ過ぎて壊したくないと思っているから。
なんて言い訳をあと何百回繰り返すんだろう?
ため息と共に焼きそばを飲み込み、手を合わせ『ごちそうさま。』をした。
『じゃあ、行く?散歩』
「うん!」
食べ終えたゴミをゴミ箱に投げ、公園を後にした。
花火が上がるたび、離れていた体が少しづつ近づいていく。
「どこまで行こうかな?」
『スミレが行きたい所まで付き合うよ。決まってるならだけど』
「行ったことがない場所がいいな。晴斗がぶたん遊んでる場所とか、よく通る道とか……?」
『秋みたいに寄り道しないからなぁ……』
「はい!通学路がいいですっ!」
手をあげて、満面の笑を浮かべるスミレに拍子抜けしてしまう。
『通学路?!』
「ダメかな?」
『いや、ダメじゃないけど、本当それでいいの?』
「うん。どんな道を通ってるのか見てみたいし、高校も見たい。」
『……じゃあ、手繋いどかないと。』
「えっ?!」
『暗いし、はぐれたら危ないから。
昼間の明るい時ならいくらでも案内するんだけど、時間ないしね?』
照れながらも重ねる手をぎゅっと握り、握り返された感触に胸が苦しくなる。
この感覚は嫌いじゃない。
キュンッと胸が詰まる度スミレを近くに感じることが出きるから……。


