吹き抜ける生ぬるい風にあたりボーッと
空を眺めていた。


『そういえば......』


買った指輪の存在を思い出し慌てて記憶を辿った。
 確か……机の引き出しの一番奥に隠したはず。引き出しの奥に手を伸ばすと『あった。』
 指輪を眺め、どのタイミングで渡そうか悩みながら、時計に目を向けると、そろそろスミレが 仕度を始める頃だった。
 机に並べた小さな箱の蓋を開けると、買った時のまま小さな小袋とネックレスのチェーンが2本窮屈そうに絡まっていた。


『どうしよう』


 青い小袋を取りだすと、青い石のついた指輪が掌に落ちてきた。
そっと右手の薬指にはめてみる。


『……スミレ、着けてくれるかな?』


一人呟きながら、指輪を外しチェーンを通すと小袋の上に置いた。
 もうひとつの指輪も取りだし、同じようにチェーンを通しそのまま首に着けた。
 紫色の石とスミレの名前を重るとか笑われそうだけど、普段側にいて守れない分の想いを指輪に託した。
 男避けになってくれればいいけど……。
紫色の小袋に青い石の指輪を入れ、ポケットにしまった。


『はぁー……』


時計に目を向け、早い気もしたけど一階へ降りた。
 昨日、水沢から《時間は6時。神社前の公園入口で。水沢》と業務連絡のような一斉送信メールを見て、たまたま来ていた秋と首を傾げた。


「なんで神社じゃなくて公園なんだろ?」


 不思議に思いながら《わかった。》と返事を返した。


『……』


 階段を下りたはいいが、どうしよう
客間では、スミレと友紀ちゃんのハシャグ声が聞こえてくる。
 覗いてもし着替え中だったら?……それはそれで少し見たいけど。
仕方ない、リビングで待つか。


『はぁー……』


 ドクッドクッと自分の鼓動を聞きながら、ポケットの上から指輪を握りしめ、どうか受け取ってくれますようにと願いを込めた。
 ソファーの上にで体育座りのまま仕度が終わるのをジッと待っていた。


「可愛い~、似合う!」


友紀ちゃんの声が聞こえる度、身体がピクリと反応してしまう。
 まだ掛かるんだろうか?チラチラとドアの向こうを見ては誰かが通るのを期待していた。
 一人ソワソワしている内、居た堪れずリビングを出た。
階段前まで来ると、客間がある廊下を見つめた。
 どちらかが出てくるのを期待して待つも、そうタイミングよく現れるはずもなく、諦め階段を上がった。


『俺、なにやってんだろう?』


力なく笑い部屋に入ると、まっすぐベランダに向かい、手摺に寄りかかった。


『浴衣姿、早くみたいな……』


あの髪飾り、もう着けたかな?