『あ、すいません、ネックレスのチェーンだけって売ってますか?』
「少々お待ちください」
にっこり笑った店員が姿を隠し再び現れた手には2つのチェーンが握られていた。
「シルバーとゴールドしか在庫がなくて申し訳ないんですが、よろしかったですか?」
『あ、はい。大丈夫です』
「どちらにしますか?」
『じゃあ……シルバーを二つお願いします』
「かしこまりました。」
手際よく袋詰めする店員に感謝し、会計を済ませ指輪を鞄に閉まっている所にスミレが戻ってきた。
「何か買ったの?」
『ん?ちょっと……』
苦笑いを浮かべていると、スミレが最後にとアクセサリーの前に向かった。
その横顔がハッとし、落ち込むまでそう時間はかからなかった。
『どうした?』
聞きながら隣に並ぶと、指輪がなくなり、スペースができた場所を見つめ「指輪、無くなってる……」と、また哀しい表情を浮かべる後ろで、レジの方から店員の「ありがとうございました~」の声が耳に入った。
それはスミレも同じらしく、声の方を振り返り「あの二人が買ったのかな?」と呟いた。
『……かもな』
合わせて言った言葉の裏で、バレないかとヒヤヒヤしていた。
──それからのスミレはどこか上の空で、俺の話しも耳に入らないのか「ごめん」が増えた。
話題を変えようと店内を歩きながら、スミレとはぐれぬよう手を繋ぐも、スミレの表情は変わらなかった。
そんな時だった、雑貨を見ているとき、何気なく振り返った俺の目に見覚えのある傘と、見知った背中を見つけてしまった。
俺の勘違いかもしれない。そう思い込み視線をはずした
「ハル、痛いっ!」
無意識のうちに強く握りすぎていた手を緩め、心配そうな顔が俺だけに向けられているのを見ながら、心を落ち着かせた。
「どうしたの?」
『ごめん、ちょっと不安になって』
「大丈夫?」
小首を傾げる仕草に、何度も思っては止めた告白を、今ここでしてしまおうかとスミレの名前を呼んだとほぼ同じタイミングで、俺の名前が呼ばれた。
「晴斗?」
スミレの驚く顔を見れば、後ろに誰がいるかは予想ができた。
その人とは、出来ればこのタイミングで会いたくはなかった。
『大丈夫……』
そう自分に言い聞かせ冷静を装いながら振り返ると、秋と少し落ち着きのない東雲がいた。
「買い物?」
秋の言葉に何も言わず頷いた。
「……そっか」
妙な沈黙が流れ、互いに探り会う視線を交わし、内容のない会話の途中で『そうだ……』とスミレに東雲の、東雲にスミレの紹介をした。
なんて言えばいいのかわからず、スミレには『同じクラスの東雲莉乃。俺と秋の友達』と伝え、東雲には『えっと……いとこのスミレ』と伝えた。
「初めまして」とお互いに挨拶を交わす間中ずっとスミレの手を握っていた。
その手を隠すようにスミレが背中に手を回した。
「じゃあ、また後で」
秋の言葉を最後に二人と別れた。
二人の姿が見えなくなると、隠れた手をが姿を現した。
「大丈夫?」
『ん、......ごめん。』
それから暫く、沈黙が続いた。
どんな言葉も言い訳に変わってしまいそうで、あの時言えなかった事を冷静になった頭で改めてスミレに話し、謝った。
東雲に会わせたくなかった理由、当て付けのように手を握っていた事、また東雲を傷つけてしまったと後悔している事。
それから、今日まで俺に起きた事と気持ちを包み隠さず素直に話した。
『たぶん、東雲は気づいてたと思う。スミレの事は話してたから……』
「なんて?」
『俺の、大切な人だって。』
それを聞いたスミレは、耳まで真っ赤にしながら「そっか」と言った。
『後で秋にも謝らないと……』
小雨になった空を見上げ、家路へ向かった。
「少々お待ちください」
にっこり笑った店員が姿を隠し再び現れた手には2つのチェーンが握られていた。
「シルバーとゴールドしか在庫がなくて申し訳ないんですが、よろしかったですか?」
『あ、はい。大丈夫です』
「どちらにしますか?」
『じゃあ……シルバーを二つお願いします』
「かしこまりました。」
手際よく袋詰めする店員に感謝し、会計を済ませ指輪を鞄に閉まっている所にスミレが戻ってきた。
「何か買ったの?」
『ん?ちょっと……』
苦笑いを浮かべていると、スミレが最後にとアクセサリーの前に向かった。
その横顔がハッとし、落ち込むまでそう時間はかからなかった。
『どうした?』
聞きながら隣に並ぶと、指輪がなくなり、スペースができた場所を見つめ「指輪、無くなってる……」と、また哀しい表情を浮かべる後ろで、レジの方から店員の「ありがとうございました~」の声が耳に入った。
それはスミレも同じらしく、声の方を振り返り「あの二人が買ったのかな?」と呟いた。
『……かもな』
合わせて言った言葉の裏で、バレないかとヒヤヒヤしていた。
──それからのスミレはどこか上の空で、俺の話しも耳に入らないのか「ごめん」が増えた。
話題を変えようと店内を歩きながら、スミレとはぐれぬよう手を繋ぐも、スミレの表情は変わらなかった。
そんな時だった、雑貨を見ているとき、何気なく振り返った俺の目に見覚えのある傘と、見知った背中を見つけてしまった。
俺の勘違いかもしれない。そう思い込み視線をはずした
「ハル、痛いっ!」
無意識のうちに強く握りすぎていた手を緩め、心配そうな顔が俺だけに向けられているのを見ながら、心を落ち着かせた。
「どうしたの?」
『ごめん、ちょっと不安になって』
「大丈夫?」
小首を傾げる仕草に、何度も思っては止めた告白を、今ここでしてしまおうかとスミレの名前を呼んだとほぼ同じタイミングで、俺の名前が呼ばれた。
「晴斗?」
スミレの驚く顔を見れば、後ろに誰がいるかは予想ができた。
その人とは、出来ればこのタイミングで会いたくはなかった。
『大丈夫……』
そう自分に言い聞かせ冷静を装いながら振り返ると、秋と少し落ち着きのない東雲がいた。
「買い物?」
秋の言葉に何も言わず頷いた。
「……そっか」
妙な沈黙が流れ、互いに探り会う視線を交わし、内容のない会話の途中で『そうだ……』とスミレに東雲の、東雲にスミレの紹介をした。
なんて言えばいいのかわからず、スミレには『同じクラスの東雲莉乃。俺と秋の友達』と伝え、東雲には『えっと……いとこのスミレ』と伝えた。
「初めまして」とお互いに挨拶を交わす間中ずっとスミレの手を握っていた。
その手を隠すようにスミレが背中に手を回した。
「じゃあ、また後で」
秋の言葉を最後に二人と別れた。
二人の姿が見えなくなると、隠れた手をが姿を現した。
「大丈夫?」
『ん、......ごめん。』
それから暫く、沈黙が続いた。
どんな言葉も言い訳に変わってしまいそうで、あの時言えなかった事を冷静になった頭で改めてスミレに話し、謝った。
東雲に会わせたくなかった理由、当て付けのように手を握っていた事、また東雲を傷つけてしまったと後悔している事。
それから、今日まで俺に起きた事と気持ちを包み隠さず素直に話した。
『たぶん、東雲は気づいてたと思う。スミレの事は話してたから……』
「なんて?」
『俺の、大切な人だって。』
それを聞いたスミレは、耳まで真っ赤にしながら「そっか」と言った。
『後で秋にも謝らないと……』
小雨になった空を見上げ、家路へ向かった。