結局ハンバーガーもポテトも食べてしまった。
まだ食べてるスミレの横顔を観察していると、口一杯に詰め込んだハンバーガを少しずつコーラで流し込みながら食べる姿につい笑ってしまう。
『詰めすぎ......ククッ』
そんな小さい口のどこにそれほど入ってるのか、口の端にケチャップをつけたまま、視線に気づいてこっちを見た。
「ん?」
首を傾げるスミレの口元のケチャップを人差し指で拭うと、驚き顔を逸らすスミレの隣で指に付いケチャップを眺めていると、ナプキンで拭き取られた。
「舐めるのとか恥ずかしいからやめてよ......!」
拗ねながらまだ残ってるのか、口を動かしながら俺の顔を見る仕草にドキッとした。
『......残念。なんて、フフッ』
「ズルい。」
器用に喋るスミレに感心しながら、食べ終えるまで見ていた。スミレは恥ずかしいと言いながら俺から顔を隠してしまうけど、それでも見つめていた。
俺より年上のくせに俺より子供で、ふとした瞬間に見せる大人な表情に気持ちが後退りする。
泣き虫なくせに強がって大丈夫だと言われる度に胸が痛くて苦しくなる。
──こんな事が起こる度に好きになっていったら、いつか俺が壊れてしまいそうで怖くなった。
愛しい人がそばにいて、互いの気持ちを理解してるのに、それ以上踏み込めないのは、どこかで気持ちにブレーキをかけてるからなんだろうか?
「──ごちそうさまでした。」
その声に我返り、隣を見ると同じようにスミレも俺を見ていた。
『なに?』
「なんでもない」
不機嫌になるその表情も俺には愛しくて、可愛すぎて......、切ないくらいに遠く感じてしまう。
『じゃあ、行こうか?』
微笑んだ俺を見るスミレの目が何処か悲げに見えた。
「……晴斗」
『ん?大丈夫だよ』
安心させるように頭を撫で、プレートを片付けると、スミレに手を差し出した。
なにも言わず握られた手は、今までで一番強く握り返された──
『で、どこに行くの?』
ファーストフード店を出ると、ビルの中を歩きながらスミレが言っていた髪飾りがあるお店を探した。
歩き回ってようやく見つけたお店には、和洋のアクセサリーや小物、髪飾りがところ狭しと並べられていた。
「わぁ、かわいい~!」
髪飾りを見ながら声をあげるスミレの瞳はキラキラしていた。
『やっぱ女の子だな。ゆっくりでいいよ』
「あ、ありがとう」
次第に真剣になる表情を見ながら、店内を見渡した。
繋いだ手が邪魔になってる気がして指を緩めると、スミレがギュッと力を込め
「まだ離さないで?」消え入りそうなほど小さな声に、店だということを忘れて抱き締めそうになった。
『うん。』
なんだか最近こんな顔ばかりさせてる気がする。
笑顔にするのって案外難しいんだな……。
「晴斗、どうかした?」
『ん?なんでもないよ。気に入ったのあった?』
首を傾げるスミレは、にっこり笑い蝶々がモチーフの髪飾りを俺に見せた。
「これどう思う?」
そう言って髪飾りを頭に乗せた。
『いいんじゃない?』
「本当にそう思ってる?」
『うん。』
「…じゃあ、どっちの色がいい?」
そう言って赤と青の色違いの髪飾りを手に乗せ聞いてきた。
『浴衣着るときに付けるんだよな?』
「うん」
『何色の浴衣?』
「紺色」
『紺か……じゃあ、赤い方』
「どうして?」
『はぐれた時目印になるかなって。
髪飾りが無くても見つける自信はあるけど、かわいいスミレも見てみたいから……』
その言葉がよほど嬉しかったのか、髪飾りを大事そうに握りしめながらレジへと向かった。
「……あ、かわいい」
レジまであと少しの所でスミレの足が止まった。
視線の先にはペアのアクセサリーが並べられていて、ネックレス・ブレスレット・アンクレット・指輪が対になって置かれていた。
「かわいい」
その横顔は切なくて、思わず『欲しい?』と口にしてしまうほどだ。
「え? ううん、いらない」
口ではそう言っていたけど、切ない瞳はペアリングに釘付けだった。
猫の首輪と書かれたそれは、鈴の変わりに空より濃い青と花の色を移したようなきれいな紫色の石がついていた。
「行こう?」
手を引く後ろ姿は強がっているようにも見え、会計を済ませている間中、ずっと指輪の事が頭から離れなかった。
「ありがとうございました~」
後ろ髪を退かれながら店を後にした。
「ちょっと、トイレに行ってくるね?」
『うん』
手を振るスミレの姿が見えなくなったのを確認すると、急いで店に戻り見つめていたペアリングを手に迷わずレジに向かった。
『お願いします』
「プレゼントようにお包みしますか?」
『いえ、このままで』
少し値は張るけど、いいよな?
これくらいしかできないし……。
今まで使い道のなかったお小遣いがやっと役立つ時が来て、お金も喜んでるだろうとソワソワしながら店員と通路を見ていた。
まだ食べてるスミレの横顔を観察していると、口一杯に詰め込んだハンバーガを少しずつコーラで流し込みながら食べる姿につい笑ってしまう。
『詰めすぎ......ククッ』
そんな小さい口のどこにそれほど入ってるのか、口の端にケチャップをつけたまま、視線に気づいてこっちを見た。
「ん?」
首を傾げるスミレの口元のケチャップを人差し指で拭うと、驚き顔を逸らすスミレの隣で指に付いケチャップを眺めていると、ナプキンで拭き取られた。
「舐めるのとか恥ずかしいからやめてよ......!」
拗ねながらまだ残ってるのか、口を動かしながら俺の顔を見る仕草にドキッとした。
『......残念。なんて、フフッ』
「ズルい。」
器用に喋るスミレに感心しながら、食べ終えるまで見ていた。スミレは恥ずかしいと言いながら俺から顔を隠してしまうけど、それでも見つめていた。
俺より年上のくせに俺より子供で、ふとした瞬間に見せる大人な表情に気持ちが後退りする。
泣き虫なくせに強がって大丈夫だと言われる度に胸が痛くて苦しくなる。
──こんな事が起こる度に好きになっていったら、いつか俺が壊れてしまいそうで怖くなった。
愛しい人がそばにいて、互いの気持ちを理解してるのに、それ以上踏み込めないのは、どこかで気持ちにブレーキをかけてるからなんだろうか?
「──ごちそうさまでした。」
その声に我返り、隣を見ると同じようにスミレも俺を見ていた。
『なに?』
「なんでもない」
不機嫌になるその表情も俺には愛しくて、可愛すぎて......、切ないくらいに遠く感じてしまう。
『じゃあ、行こうか?』
微笑んだ俺を見るスミレの目が何処か悲げに見えた。
「……晴斗」
『ん?大丈夫だよ』
安心させるように頭を撫で、プレートを片付けると、スミレに手を差し出した。
なにも言わず握られた手は、今までで一番強く握り返された──
『で、どこに行くの?』
ファーストフード店を出ると、ビルの中を歩きながらスミレが言っていた髪飾りがあるお店を探した。
歩き回ってようやく見つけたお店には、和洋のアクセサリーや小物、髪飾りがところ狭しと並べられていた。
「わぁ、かわいい~!」
髪飾りを見ながら声をあげるスミレの瞳はキラキラしていた。
『やっぱ女の子だな。ゆっくりでいいよ』
「あ、ありがとう」
次第に真剣になる表情を見ながら、店内を見渡した。
繋いだ手が邪魔になってる気がして指を緩めると、スミレがギュッと力を込め
「まだ離さないで?」消え入りそうなほど小さな声に、店だということを忘れて抱き締めそうになった。
『うん。』
なんだか最近こんな顔ばかりさせてる気がする。
笑顔にするのって案外難しいんだな……。
「晴斗、どうかした?」
『ん?なんでもないよ。気に入ったのあった?』
首を傾げるスミレは、にっこり笑い蝶々がモチーフの髪飾りを俺に見せた。
「これどう思う?」
そう言って髪飾りを頭に乗せた。
『いいんじゃない?』
「本当にそう思ってる?」
『うん。』
「…じゃあ、どっちの色がいい?」
そう言って赤と青の色違いの髪飾りを手に乗せ聞いてきた。
『浴衣着るときに付けるんだよな?』
「うん」
『何色の浴衣?』
「紺色」
『紺か……じゃあ、赤い方』
「どうして?」
『はぐれた時目印になるかなって。
髪飾りが無くても見つける自信はあるけど、かわいいスミレも見てみたいから……』
その言葉がよほど嬉しかったのか、髪飾りを大事そうに握りしめながらレジへと向かった。
「……あ、かわいい」
レジまであと少しの所でスミレの足が止まった。
視線の先にはペアのアクセサリーが並べられていて、ネックレス・ブレスレット・アンクレット・指輪が対になって置かれていた。
「かわいい」
その横顔は切なくて、思わず『欲しい?』と口にしてしまうほどだ。
「え? ううん、いらない」
口ではそう言っていたけど、切ない瞳はペアリングに釘付けだった。
猫の首輪と書かれたそれは、鈴の変わりに空より濃い青と花の色を移したようなきれいな紫色の石がついていた。
「行こう?」
手を引く後ろ姿は強がっているようにも見え、会計を済ませている間中、ずっと指輪の事が頭から離れなかった。
「ありがとうございました~」
後ろ髪を退かれながら店を後にした。
「ちょっと、トイレに行ってくるね?」
『うん』
手を振るスミレの姿が見えなくなったのを確認すると、急いで店に戻り見つめていたペアリングを手に迷わずレジに向かった。
『お願いします』
「プレゼントようにお包みしますか?」
『いえ、このままで』
少し値は張るけど、いいよな?
これくらいしかできないし……。
今まで使い道のなかったお小遣いがやっと役立つ時が来て、お金も喜んでるだろうとソワソワしながら店員と通路を見ていた。


