「私は大丈夫だから、気にしないで食べて?」


『いや、俺が大丈夫じゃないし。……食べ終わるまであっちで待っててくれない?』


ソファーを指差し言うと、「邪魔してないのに……」と言いながらも素直に従うスミレが可愛くて、緩んだ顔を背中に向けた。
 ──その後、背後からの視線を感じながら、漸く食べ終えると、食器を片付けながらスミレに声を掛けた。


『終わったよ?』


「遅い!」


何故か怒られ、苦笑した。


『まだ時間あるし、そんな急がなくても』


時計を見ながら言うと「今、めんどくさいって思ったでしょ!?」と唐突に言われ目が点になりそうだった。


『ハァー……』


 俯き拗ねるスミレに近づき、つむじを眺めながら(可愛すぎだ、バカ……)と心の中で呟いた。
 顔を上げたスミレの瞳はまっすぐに俺だけを映し、小さな唇が俺の名前を呼ぶ。


『うっ……可愛すぎる』


 触れたい、キスしたい、抱きしめたい。
そんな衝動に駆られながら、呟いた声はハッキリと伝わってしまい


「えっ?!」


動揺する目が泳ぎ、顔も耳も首も見る間に赤く染まっていった。


『っ・・・ごめん。
俺やっぱ、スミレとは出掛けたくないかも』


「え?」


不安になる目に涙が溜まり、零れる前に今想ってる事を素直に伝えた。


『だって……俺以外の奴がスミレの事見るの耐えられないし。
ワガママなのも身勝手なのもわかってるけど。そんな事想像しただけで、この辺がモヤモヤする……』


胸をさすりながら、自分の言動にまるで告白みたいだと苦笑した。


『冷静でいるのも大変なんだよ……』


告白めいたことを言ってしまったと気づいたのは、言い終えて妙な沈黙ができた時だった。
 ワザとらしくタメ息を吐き、視線を逸らすと、恥ずかしさをごまかす為背を向け、出掛ける準備をするよう言い残しリビングを出た。