『ハァ……分かったよ』


 タオルケットを持ち上げ、ニコニコしてるスミレの頬にはまだ涙の跡が残っていた。


『もう少しそっち寄って』


壁際にそれるスミレとの間を開け、自分の腕を枕代わりに頭の下に敷くと、仰向けのまま目を閉じた。


「呆れた?」


『なんで?』


「子供たいなこと言うから」


俺には嬉しい事だって、スミレには黙っておこう。言ったら二度と見せてくれないだろうから


『呆れてるように見える?』


「暗くて分かんない」


『そっか、よかった』


なんとなく目を開けると、また服の裾をつかまれた気がした。


『眠れないか?』


スミレの方に寝返りを打つと、「うん」と声がした。


『……手繋ぐ?』


「手じゃなくて、もう少し近くにいちゃ駄目?」


『どのくらい近く?』


「腕の中に入る距離……?」


『キスするかも』


「……」


『嫌だろ、だから手で我慢して?』


「嫌じゃないから、近くがいい」


珍しくワガママを言うスミレに根負けした俺は、『わかった』と布団を持ち上げた。素直に近寄ってくるスミレが俺の胸に頭を寄せ背中に腕を回した。


『……近すぎる』


「安心する」


 俺は全然安心出来ない。
消し去った煩悩が俺のなかで顔を覗かせる。
 俺の理性、いつまで保つかな?っつうか今も結構、危なかったりして……


『って、寝てるし。』


考え事をしてる間に眠ってしまったスミレの寝息を聞きながら、髪を撫でているうち、ゆっくりと眠気に誘われ気が薄れる前に『おやすみ……』と声をかけた。