その後も言うチャンスは幾らでもあったのに、秋は普段と変わらぬテンションで仲間とはしゃいでいた。
そんな秋達の会話を後ろに聞きながら、俺は窓の外に目を向けた。一向に止む気配のない雨の音を想像しながら、窓ガラスに写る人影が左右に揺れるのを、頬杖を付いて見ていた。
こんな時ほど窓際の席で良かった思う。
──ボーっとしている間に、秋達は何処かへ行ってしまった。
俺は秋がいない事を確認すると、東雲宛に【放課後、残って欲しい】と、書いたノートの切れ端を渡しに行った。
ちょうど1人だった東雲は俺を見て驚き、顔を真っ赤にしながら小さく会釈すると、切れ端を受け取り握りしめた。
秋を気にしながらも、席に戻り手紙を読み返すため鞄に手を入れると、確かに入れたハズの場所に手紙が無かった。
『あれ?』
鞄の中を覗いてみても、今朝入れた場所に手紙はなく、代わりに見覚えのある手紙が出てきた。
そこにはまる文字で俺の名前が書かれてあり、差出人は東雲だった。
『いつの間に……』
どこかのタイミングですり替えたんだろう、いない秋の姿を探し再び手紙に目線を戻した。
『……。』
封筒から手紙を出すと、何度も書き直したんだろう、文字を消した跡が所々残っていた。
【櫻井晴斗 さま
突然でビックリしてますよね?
喋ったこともないのに、いきなりこんな手紙、ごめんなさい。
直接は恥ずかしいので、手紙にしました。
櫻井くんは覚えてないと思うけど、廊下で転んだ私に、笑いもせず手を貸してくれた時からずっと気になってました。
気づいたら目で追っている自分がいて、好きだと気づいた時から叶わない恋だと諦めていたけど、どうしても気持ちを伝えたくて書きました。
答えは分かってます。
でも、期待だけさせてください、返事待ってます。
東雲より】
──その手紙をそっと封筒に戻し、静かにため息を吐いた。
天気雨が続く空を見上げ、最後の文章を思い返していた。
“期待だけさせてください”
『答えは分かってます。か……』
雲を眺めていると、突然黄色い傘がクルクルと回り始めた。
傘とお揃いの黄色い長靴が水たまりに跳び込み、傘がこっちに振り向く寸前で、トントンと肩を叩かれ一瞬にして現実の世界に引き戻された。
『ハッ!』
寸の間動けなかった。ゆっくり目線と顔を上げると、そこにはイタズラを仕掛けた子供のような顔の秋が立っていた。
「どうした?」
『秋……』
やっと出た声は、かすれていた。
「手紙、読んだか?」
『うん……』
軽く頷きながら答えた。秋からは「そっか」とため息混じりの言葉が返ってきた。
『授業、始まるぞ』
「分かってるよ」
秋が去ろうと足を動かした時、『……秋』何故か呼び止めていた。
「んー?」
『今日一人で帰る。』
その言葉の意味を聞かず、にっこり笑うと「ん、分かった」と、まだ騒いでる仲間の元へ歩いていった。────
そんな秋達の会話を後ろに聞きながら、俺は窓の外に目を向けた。一向に止む気配のない雨の音を想像しながら、窓ガラスに写る人影が左右に揺れるのを、頬杖を付いて見ていた。
こんな時ほど窓際の席で良かった思う。
──ボーっとしている間に、秋達は何処かへ行ってしまった。
俺は秋がいない事を確認すると、東雲宛に【放課後、残って欲しい】と、書いたノートの切れ端を渡しに行った。
ちょうど1人だった東雲は俺を見て驚き、顔を真っ赤にしながら小さく会釈すると、切れ端を受け取り握りしめた。
秋を気にしながらも、席に戻り手紙を読み返すため鞄に手を入れると、確かに入れたハズの場所に手紙が無かった。
『あれ?』
鞄の中を覗いてみても、今朝入れた場所に手紙はなく、代わりに見覚えのある手紙が出てきた。
そこにはまる文字で俺の名前が書かれてあり、差出人は東雲だった。
『いつの間に……』
どこかのタイミングですり替えたんだろう、いない秋の姿を探し再び手紙に目線を戻した。
『……。』
封筒から手紙を出すと、何度も書き直したんだろう、文字を消した跡が所々残っていた。
【櫻井晴斗 さま
突然でビックリしてますよね?
喋ったこともないのに、いきなりこんな手紙、ごめんなさい。
直接は恥ずかしいので、手紙にしました。
櫻井くんは覚えてないと思うけど、廊下で転んだ私に、笑いもせず手を貸してくれた時からずっと気になってました。
気づいたら目で追っている自分がいて、好きだと気づいた時から叶わない恋だと諦めていたけど、どうしても気持ちを伝えたくて書きました。
答えは分かってます。
でも、期待だけさせてください、返事待ってます。
東雲より】
──その手紙をそっと封筒に戻し、静かにため息を吐いた。
天気雨が続く空を見上げ、最後の文章を思い返していた。
“期待だけさせてください”
『答えは分かってます。か……』
雲を眺めていると、突然黄色い傘がクルクルと回り始めた。
傘とお揃いの黄色い長靴が水たまりに跳び込み、傘がこっちに振り向く寸前で、トントンと肩を叩かれ一瞬にして現実の世界に引き戻された。
『ハッ!』
寸の間動けなかった。ゆっくり目線と顔を上げると、そこにはイタズラを仕掛けた子供のような顔の秋が立っていた。
「どうした?」
『秋……』
やっと出た声は、かすれていた。
「手紙、読んだか?」
『うん……』
軽く頷きながら答えた。秋からは「そっか」とため息混じりの言葉が返ってきた。
『授業、始まるぞ』
「分かってるよ」
秋が去ろうと足を動かした時、『……秋』何故か呼び止めていた。
「んー?」
『今日一人で帰る。』
その言葉の意味を聞かず、にっこり笑うと「ん、分かった」と、まだ騒いでる仲間の元へ歩いていった。────


