『何してるの?』
「……晴斗こそ!どこいってたの傘も差さないで」
『散歩。』
──店を出たとき、少し弱まった雨が僕を迎えた。
傘は買わず濡れて帰ることを選んだ。
先生とマスターは傘を貸してくれようとしたけど、濡れて帰りたいからとその申し出を断った。──
「嘘つき。……風邪引く」
『このくらいじゃ引かないよ。』
スミレは俺と目を合わせようとしなかった。なにか言いたげにモジモジしたままシャツの裾をギュッと握りしめている。
『……さっきはごめん。』
「っ私の方がごめんなさい。晴斗を傷つけたいわけじゃなくて……」
『とりあえず、入らない?
こんなところでする話じゃないし。少し寒くなってきたし』
「うん。」
シュンとするスミレと家に入ると、靴を脱ぎそのまま脱衣場に向かった。
濡れた服を脱ぎ廊下に出ると、壁にもたれ下を向いてるスミレがいた。
『何してるの?』
「晴斗待ってた……。」
『・・・そう。』
変な沈黙があり、濡れた髪から水滴が落ち全身を鳥肌が駆け抜けた。
タオルを取りに再び脱衣場に戻り、小さく『やばい……!』と噛み締めるように言いながら棚からタオルを掴み頭からら被った。
『あー……』
その場にしゃがみ込み、髪をガシガシ拭いた。自分でも顔が赤いのが分かるほど熱かった。
「晴斗、大丈夫?」
『っ!……いつからいたの?』
「今、来たばっかだけど……」
『そっか』
自分でも驚くほど低い声が出た。
「まだ怒ってる?」
その問いかけに首を左右に振った。
怒ってたのはスミレの方だったのに。
これも夢なのかと唇を強く噛んだら痛かった。
『夢じゃないのか』
「晴斗、なにか着ないと風邪引いちゃう」
『帰ってきてから風邪引くしか聞いてない気がする』
フッと小さく笑い、そのまま脱衣場を出た。
冷たい廊下に響く二人分の足音は、俺が部屋につくまで続いた。
『……どこまでついてくるの?』
「わかんない。」
『フッ……なんだそれ。着替えるから座って待ってれば?』
ドアを開けるとスミレを招き入れた。
着替えながらベッドに座り、俺を待つ姿を遠巻きに見ながら薄ら笑いを浮かべていた。
『スミレ』
「はい?」
『借りてきた猫みたいだな』
「……晴斗、本当に覚えてないの?」
『何を?』
「……。じゃあ、私にしたことも覚えてないんだ。」
スミレはタメ息を吐き「晴斗が思い出すまで待つから」と寂しそうに呟いた。
『思い出せないことを待つの?』
「うん」
『思い出せなかったら?』
「そばで分からないようにヒントを出してあげる」
『なんだそれ?』
いつものスミレだ。
笑顔になったスミレの隣に座ると、「晴斗、知らない匂いがする」そう言って首元に顔を近づけてきた。
『っん……くすぐったい』
「どこ行ってきたの?」
目が合い固まるスミレは人指し指を俺の唇に当てた。
「血、出てるよ?」
そう言って自分の指についた血を見せてきた。
『あ、さっき噛んだときに切れたのか。』
スミレの指についた血をティッシュで拭い、自分の唇を舐めると『鉄の味がする。』
「痛い?」
心配してるのが表情に出すぎて、笑ったら口を尖らせ顔を背けてしまった。
『さっき先生とご飯食べてきた。
バッタリ会って、無理矢理連れていかれたんだけど。
そのお店である人にあって、すごくかっこよくて大人で、あんな人ならスミレの隣を堂々と歩けるのかな?って……あ、その人は男なんだけど』
沈黙になり、ため息を吐いた。
『スミレの笑顔奪ってばっかりだな?
最近多いね、こんな感じになるの。
……言うタイミングって難しいよな?』
一人で喋っても返事はなくて、何を考えてるのか急に分からなくなる。
なあ、今誰のこと考えてる?
そう聞いたら、なんて答えるだろう?
というか、そんなことを聞いて俺はどうしたいんだろう?
『もう、分かんないや……』
バカになった涙腺が涙を出そうと鼻の奥を刺激する。
ベッドに倒れたらスミレの肩がピクリと動いた。
……俺、なんで帰ってきたんだっけ?
「晴斗?」
『なに?』
「その先生って、女の人?」
『そうだよ。保健の先生』
「その人、美人?」
『綺麗な方じゃない?』
喋りだしたと思ったら、質問攻めで。
それってヤキモチ?
枕に顔を埋めながらスミレの質問に答え続けた。
「好き?」
『何が?』
「その先生のこと。」
ああ……それが聞きたかったのか。
『嫌いじゃないよ。好きでもない。
俺が好きな人は意外にヤキモチ焼きで、怒るとなかなか許してくれない人だから、先生は違う。
それに、先生には婚約者がいる』
「あ、そうなんだ。」
遠回しだけど、スミレにわかるように好きだと伝えても、スミレは俺の言葉を素直に受け取ってくれない……。
『安心した?』
「え?うん……少し」
『ならよかった。』
「……晴斗」
『なに?』
「寝るの?もうすぐご飯だよ?」
『食べてきたからいらない。
友紀ちゃんにも言っておいて?』
「……晴斗こそ!どこいってたの傘も差さないで」
『散歩。』
──店を出たとき、少し弱まった雨が僕を迎えた。
傘は買わず濡れて帰ることを選んだ。
先生とマスターは傘を貸してくれようとしたけど、濡れて帰りたいからとその申し出を断った。──
「嘘つき。……風邪引く」
『このくらいじゃ引かないよ。』
スミレは俺と目を合わせようとしなかった。なにか言いたげにモジモジしたままシャツの裾をギュッと握りしめている。
『……さっきはごめん。』
「っ私の方がごめんなさい。晴斗を傷つけたいわけじゃなくて……」
『とりあえず、入らない?
こんなところでする話じゃないし。少し寒くなってきたし』
「うん。」
シュンとするスミレと家に入ると、靴を脱ぎそのまま脱衣場に向かった。
濡れた服を脱ぎ廊下に出ると、壁にもたれ下を向いてるスミレがいた。
『何してるの?』
「晴斗待ってた……。」
『・・・そう。』
変な沈黙があり、濡れた髪から水滴が落ち全身を鳥肌が駆け抜けた。
タオルを取りに再び脱衣場に戻り、小さく『やばい……!』と噛み締めるように言いながら棚からタオルを掴み頭からら被った。
『あー……』
その場にしゃがみ込み、髪をガシガシ拭いた。自分でも顔が赤いのが分かるほど熱かった。
「晴斗、大丈夫?」
『っ!……いつからいたの?』
「今、来たばっかだけど……」
『そっか』
自分でも驚くほど低い声が出た。
「まだ怒ってる?」
その問いかけに首を左右に振った。
怒ってたのはスミレの方だったのに。
これも夢なのかと唇を強く噛んだら痛かった。
『夢じゃないのか』
「晴斗、なにか着ないと風邪引いちゃう」
『帰ってきてから風邪引くしか聞いてない気がする』
フッと小さく笑い、そのまま脱衣場を出た。
冷たい廊下に響く二人分の足音は、俺が部屋につくまで続いた。
『……どこまでついてくるの?』
「わかんない。」
『フッ……なんだそれ。着替えるから座って待ってれば?』
ドアを開けるとスミレを招き入れた。
着替えながらベッドに座り、俺を待つ姿を遠巻きに見ながら薄ら笑いを浮かべていた。
『スミレ』
「はい?」
『借りてきた猫みたいだな』
「……晴斗、本当に覚えてないの?」
『何を?』
「……。じゃあ、私にしたことも覚えてないんだ。」
スミレはタメ息を吐き「晴斗が思い出すまで待つから」と寂しそうに呟いた。
『思い出せないことを待つの?』
「うん」
『思い出せなかったら?』
「そばで分からないようにヒントを出してあげる」
『なんだそれ?』
いつものスミレだ。
笑顔になったスミレの隣に座ると、「晴斗、知らない匂いがする」そう言って首元に顔を近づけてきた。
『っん……くすぐったい』
「どこ行ってきたの?」
目が合い固まるスミレは人指し指を俺の唇に当てた。
「血、出てるよ?」
そう言って自分の指についた血を見せてきた。
『あ、さっき噛んだときに切れたのか。』
スミレの指についた血をティッシュで拭い、自分の唇を舐めると『鉄の味がする。』
「痛い?」
心配してるのが表情に出すぎて、笑ったら口を尖らせ顔を背けてしまった。
『さっき先生とご飯食べてきた。
バッタリ会って、無理矢理連れていかれたんだけど。
そのお店である人にあって、すごくかっこよくて大人で、あんな人ならスミレの隣を堂々と歩けるのかな?って……あ、その人は男なんだけど』
沈黙になり、ため息を吐いた。
『スミレの笑顔奪ってばっかりだな?
最近多いね、こんな感じになるの。
……言うタイミングって難しいよな?』
一人で喋っても返事はなくて、何を考えてるのか急に分からなくなる。
なあ、今誰のこと考えてる?
そう聞いたら、なんて答えるだろう?
というか、そんなことを聞いて俺はどうしたいんだろう?
『もう、分かんないや……』
バカになった涙腺が涙を出そうと鼻の奥を刺激する。
ベッドに倒れたらスミレの肩がピクリと動いた。
……俺、なんで帰ってきたんだっけ?
「晴斗?」
『なに?』
「その先生って、女の人?」
『そうだよ。保健の先生』
「その人、美人?」
『綺麗な方じゃない?』
喋りだしたと思ったら、質問攻めで。
それってヤキモチ?
枕に顔を埋めながらスミレの質問に答え続けた。
「好き?」
『何が?』
「その先生のこと。」
ああ……それが聞きたかったのか。
『嫌いじゃないよ。好きでもない。
俺が好きな人は意外にヤキモチ焼きで、怒るとなかなか許してくれない人だから、先生は違う。
それに、先生には婚約者がいる』
「あ、そうなんだ。」
遠回しだけど、スミレにわかるように好きだと伝えても、スミレは俺の言葉を素直に受け取ってくれない……。
『安心した?』
「え?うん……少し」
『ならよかった。』
「……晴斗」
『なに?』
「寝るの?もうすぐご飯だよ?」
『食べてきたからいらない。
友紀ちゃんにも言っておいて?』


