朝食を済ませ、制服に袖を通しながらカバンからはみ出た封筒に目を向けた。“東雲さま”と書かれたそれは昨日、秋が受け取った俺宛のラブレターへの返事が書かれたモノだ。
 「彼女欲し~!!」と叫ぶ男子の悲痛な叫びを思い出しながら、それを見えないよう奧にしまった。


「あのさ、無理して断らなくてもいいから」


なにを思ったのか、そんな事を言う秋を見ると、小さく作り笑いを浮かべ頷いていた。


『無理はしてないけど、言葉一つで簡単に相手を拒否できるって、なんか哀しいよな?』


「へ?」


秋の眉間にシワがよった。


『いや、なんでもない』


窓の外に目を向けため息を吐くと、ネクタイを首に掛けたまま部屋を出た。
 ──玄関先で友紀ちゃんにネクタイをキツく締められ、背中を叩かれていると、秋が玄関の扉を開け呟いた。


「この雨、止むのかな?」


「昼頃に本格的に降り始めるから、傘は差して行きなさい!」


 ──そう言っていた友紀ちゃんの予報はハズレとも言いにくく、俺の勘は珍しく当たった。
 お昼が近くにつれ雨の勢いが増し、隠れていた雲の隙間から陽が差し始め、青空が顔を出した。