私は雫と話すことが楽しいと感じている。
こんな感覚も初めてだった。
この町に来て、私は"初めて"のことばかりだ。
ここに来る前は、私を誰も歓迎してくれなかった。"凄いね"なんて褒めてくれる人なんていなかった。
別に褒めてもらいたいわけじゃないけれど、周りの人達の目はとても冷たくて私自身が映ってなくて。
それなら空気になりたいと、願っていたんだ。
だから、人とはあまり関わりたくないと思っていた。
人が、苦手だった。
接する事が恐かった。
だけど、藤原夫妻や雫が私に向ける笑顔は今まで見てきたものとは全く別の――私の知らないものだった。
その笑顔は、いつの日かの優しい私の両親と被る表情だった。
写真で笑う、その表情にとても似ていたのだ。


