「ハァハァ…こんにちは」
6限目の授業が終わるとすぐさま教室を飛び出し、遅い足で全速失踪をして向かったのは、先月から始めたバイト先だった。
私は店の正面玄関の入り口から、レジの奥のすだれへと歩を進める。
今日は月曜日。
本屋でアルバイトの日だ。
本屋と言っても、ここは、おばあちゃんとその娘さんが経営しているという小さな店である。そして外観はとてもレトロな感じで趣のあるお店だ。
そしてここで扱う本は、ほとんどが古い本――古書を取り扱っている。
だから古本屋と呼んだ方が正しいかもしれない。
「そんなに急がなくても大丈夫よ。うちにはめったに客なんて来ないんだから。ね?おばあちゃん」
そうして綺麗に微笑む目の前の人は、この店での看板娘でもある、桜香(オウカ)さん。
気さくで優しくて、人付き合いが苦手な私でもよくしてくれるとても素敵な人だ。
「そうだね〜」
そうしてのんびりと眠ったようにしながら相槌を打つのは、桜香さんの母親でもある梅乃さん。どうやらこの構図からして、店の奥の畳の部屋で正座をしながら、桜香さんと一緒におしゃべりしていたみたいだ。


