教室の雰囲気が一瞬で和んだ気がした。
それくらい影響力のある笑顔だった。
「行こう」
そうして私の元まで歩を進めると、彼は私の手をぐいっと引っ張る。
「こ、困ります…!
嫌です!離して下さい!
私は雫と―――友人とご飯を食べているんです!」
勝手にやって来て勝手に人を連れまわすのは止めて欲しい。
雫はいまいち状況が呑み込めずに私をただボーっと眺めているだけだし。
しかし、私の思いが通じたのか彼は確かにその通りだと言って私を掴んでいた腕を離してくれた。
私はホッとしてもう1度席に着いた途端、
「雫さん」
「は、はい!」
―――雫、やけに緊張しちゃってる…
「空さんをいただきたいのですが…いけませんか?」
「ごほっ…」
むせた。
何もそんな誤解ある言い方をしなくても…というより少し日本語がおかしいのではないだろうか?
しかも、資料室とは全くの別人のようだ。
この笑顔を浮かべる人なら、誰もが彼の事を資料室でいきないり初対面の人を抱きしめてきた変わった人だとは思わないだろう。


