「よくぞ聞いてくれた、弟よ。」 「いや、聞いてねーし。」 兄貴は、今にも他人のフリをしたくなるような自分の世界を作り出しながら、生徒手帳を開いた。 「じっつーはぁ!なんと、桜空は、恭が好き♪っつー情報が入ってんだな!くぅっ、敵が弟ながらに悔しいぜ!」 兄貴は、そう言ってどこから出てきたのかも分からないハンカチの隅をしっかりと前歯で噛っている。 いつのネタだよ、兄貴… こんな奴と血が繋がってるのかと思うと悲しくなった。