「そろそろ時間だからな。出発するぞ。」
部屋に現れたのは金髪に青緑のかかった瞳を持ったスーツを纏う男性。
「うん。わかった。」
俺は男性に導かれるように部屋を出た。
俺はその男性をよく知っている。
彼の名前は早瀬大和。
彼は北洋高校の教師をやっていて、俺の昔住んでいた家の近所に住んでいた。
俺は小さい頃はよく遊んでもらってさ、彼のことを『ヤマト兄』と呼んで懐いていた。
あれから数年たったけど、ヤマト兄とは縁が切れることはなく今もこうして俺の兄貴分でいてくれている。
実は俺が北洋高校に編入するきっかけを作ってくれたのがヤマト兄なんだ。
ヤマト兄は北洋高校の理事長と親しい関係らしく、ヤマト兄から話が来たときに『編入したい』と返事をしたところトントン拍子で俺の編入が決まったんだ。
もちろん試験などもなく、まさに顔パス感覚。高校3年生で帰国子女をすぐに入れてくれる高校を探すのは大変だろうと思っていたけど、まさかこんなに簡単に編入が決まるなんて本当に驚いた。
だから俺はヤマト兄にはすごく感謝しているんだ。
「ねぇ。ヤマト兄。学校まではどれくらいかかるの?」
「学校までは徒歩15分…って所だな。他の生徒達は学校に隣接した寮に住んでいるから
すぐに着くけど、この特別寮は少し距離があるからな。これから早めの時間に家を出たほうがいいぞ。」
「そうなんだ。じゃあ、明日からそうするよ。」
北洋高校には、高校のすぐ隣に大きな学生寮がある。
俺は編入生だから隣接した学生寮には人数オーバーのためこの特別な学生寮に住むことになったんだ。
この特別寮である『蘭藤荘』は学校から少し離れた土地にある。
そして何が特別かというと、この寮は学生だけでなく、教師も一緒に暮らしている。
元々は教師用の寮として設けられたが、今は教師以外に俺みたいな事情のある編入生や理
事長の知り合いがらみの生徒たちが寮に入ることになっているらしい。
ヤマト兄の話だと俺の他に生徒が3人、ヤマト兄と教師がもう一人、それと管理人さんがこの寮で暮らしてるんだって。