でもそんな小さな信頼の全てを、こいつらはあっさりと薙ぎ倒してしまった。あたしは裏切りなんてそんな変な掟なんか知らない。そしてそんなくだらないモノの為に、自分を押し殺したくなんかない。

 あたしを抱いて消えたあいつ。
 あいつみたいに、あたしはオリジナルを目指すって決めたんだ。抱かれたあの日、あたしは知ったんだ、オリジナルってヤツの味を。またあいつに抱かれたい。でも、あたしがフェイクのままだったとしたら、きっと再会できないと思う。

 あいつの歩いている真っ直ぐな道とあたしの歩いている道が重なる為には、あたしはあたしとして真っ直ぐ歩くしかないんだと思った。
 馬鹿でフリークスは治らなくても、フェイクのままで終わっちゃいけないんだ。あたしはあたしとして、あたしなりのオリジナルにならなくちゃ。

「……あ、あたしを、殴って、蹴って……それで、あたしが、また、ウリ、するとでも、思ってンの? あたしは、もう、ウリは、絶対に、しない。あたしは、オリジナルに、なるんだ……!」
 元友達を睨み付けて言葉を叩き付けた。ウリの先に真実があるというのならば、それを追い掛けるのもアリなのかも知れない。けれどあたしにはそう思えない。この先にあるのは性病と金だけだ。楽に稼ぐのが間違いだとは言わないけれど、今のあたしにはそんなことをしてもオリジナルになんかなれないとしか思えない。だから、もう絶対にしない。

「オリジナルってなによ。……馬鹿じゃないの、あんた」
「フェイクの、腐れプッシーなんかに、言われたくねえよ」
「なんだと、てめえ!」
 元友達は転がるあたしを容赦なく蹴り付ける。口の中で鉄の味がした。それが血の味だと分かり、あたしは小さく苦笑した。手首を切ってからあたしが大切にしていた友達が、実はそんなチープなフェイクだったのだと分かった。

 唐突に後頭部に鈍痛が走り、あたしは意識を失った。