不意に、アキラの身体が強張った。眉間に強く皺が寄り、歯を食い縛っているのが分かる。小さく震えだす身体、額には汗が浮かびだした。そして何かから逃げるように、何度も頭を横に振る。

「ア、アキラ……?」
 あたしは突然のことに驚いて、思わず彼に声を掛けた。息が荒くなり、口が何度か小さく開き、何かを話しているように思えた。

「アキラ、どうしたの……?」
 彼の意識は戻らない。何が起きているのか分からないけど、でも、その強い苦しみは伝わってきた。

 きっと何か酷い悪夢を見ているんだ。
 あたしは彼の身体を強く抱き締めて、何度も彼の名前を耳元で囁いた。引っ叩いて起こそうかとも思ったけれど、なぜなのかあたしにはそれが間違いに思えたからだ。
 何度目かの呼び掛けに、やっと彼が反応した。怯え切った表情で薄く目を開き、あたしの顔を見詰めている。

「大丈夫だよ、あたし、ここにいるよ」
 囁いて、軽く額にキスをする。するとふっと身体の力が抜けた。そして力尽きたかのように、彼は眠りに落ちてしまった。

 そうか、どうしてあたし気付かなかったんだろう。今まで考えたこともなかった。どうして彼は、あんなに苦しみながらオリジナルを探しているんだろう。何の理由もなく、趣味や遊びで探せるものではないはずだ。あたしですら、リストカットやウリなんかをしていて自分を傷つけていた。

 それなら彼は一体、どうしてそれを追い求めているのだろう。そうか、あたしはまだ、彼のほんの少ししか知らないんだ。

 もっともっと深いところ、心の奥底で、もしかしたらアキラは何か深い傷を抱え込んでいるのではないのだろうか。彼の外見が個性的なのは、周囲を威嚇しているからだとあたしは思っている。だから彼は周囲に心を許さなかった。

 もしもそうだとしたら、あの星空の下で見せてくれたみたいな彼の弱さ、それを知っているのはきっとあたしだけだ。

 彼の額に浮かんでいる汗を拭いて、脱力し疲れ切った表情の彼を優しく抱き締める。
 あの星空の下であたしに弱さを見せてくれたのは、もしかしたら彼からのSOSだったのかもしれない。