あたしは仮初でも乙女でなければならない。男はあたしにそれを求めていたし、それを守っていればもらえるお金も大きかった。羞恥心を忘れた姿を見せた瞬間、男はあっさりとあたしの価値を下げてしまう。あたしみたいな若さ以外に取り柄のない女に求めることは、つまりそういう乙女としての恥じらいしかないらしい。そんな男の論理に形を合わせるのは案外簡単で、そうやって演じることがある意味で暗黙のルールみたいになっていた。

 一番金払いのいいパパは、どうやらどこかの会社のお偉いさんらしい。そういう男は大切にしなくちゃいけない。

 あたしには欲しいものがいっぱいある。ブランドもののトートバックとか財布とか、そういえばこのあいだ買った雑誌に載っていた服も靴も欲しい。携帯があるから使わないけれど、腕時計も欲しい。携帯もiPhoneに機種変したいし。そういうものはとにかくお金を喰う。幾らあってもぜんぜん足りない。とにかくお金、お金が欲しかった。

 パパのセックスはとにかくしつこい。全身を舐められるくらいならいいけど、挿入れてからも二時間は続く。セックスは嫌いじゃないし気持ちいいけれど、それはあたしにとってお金をもらう為の儀式みたいなものだった。