「あっ、うっ、ううん……」
 まるで自分のものではないかのように、身体が強張る。ずっとひとりで寂しさを紛らわしていたせいなのか、それともあたしはやっぱり淫乱なのかは分からない。けど、少なくともあたしの身体は、あいつからの愛撫を悦んでいた。

 男に抱かれるなんて今更恥ずかしいとも思わないはずなのに、あいつの視線があたしの稜線を舐めるように撫ぜると、あたしは思わず身体を隠してしまった。

 そんな自分が自分とは思えない。あたしの身体のはずなのに、あたしの思うように動いてくれない。
 でも、あいつからの視線の束縛は熱くて、身体を抱き寄せられた瞬間、あたしはもう我慢できなくなっていた。

 もしも淫乱と思われてしまったら考えると、それはそれで怖い。ずっと求めていたあいつにそんな女だと烙印を押されてしまったら、あたしはもう生きていく何もかもを失ってしまうように思えた。

 でも、もしも明日からの温泉旅行がこの人との最後の触れ合いだとしたら、少なくともあたしは想いを残したくない。

 あいつの指が、あたしの乳房に優しく触れる。出逢ったあの日も、まるで宝物に触れるかのように優しく抱いてくれた。そんなに優しく抱かれたことなんてなかった。男はいつも身体を求めている時、まるであたしを屈服させ支配するかのように、強く、激しく、しつこく、時に痛く抱いた。
 それなのにこの人だけはあたしを優しく抱いた。その微妙なのに大きな違いは、あたしにとって驚きだった。