どこにも行かないよ。
だってあたしは、雄大のことが好きだから。
だけど、雄大は?
今も、彼女のことが…
「あ、悪い!」
我に返ったように手を離す雄大。
捕まれてた手にはまだ熱が残っている。
「う、ううん…」
ドキドキする。
あたしは台所にコップを戻し、部屋にむかおうとした。
――ブーッ
突然、服のポケットに入っていた携帯が音をたてる。
こんな時間に、誰?
電話を知らせる着信音。
あたしは急いで確認した。
ディスプレイに表示されたのは、意外な相手。
「もしもし、…おとうさん?」
一ヶ月以上も音信不通だった父からの電話。
もちろん同様を隠せない。
うわずった声を必死に押さえようとしている。
「え、どうゆう…」
一方的にベラベラと話す父。
あたしの頭にうまく入ってこない。
なんで今さら。
というよりも、どうしてそんなことに。

