騙された。
そんな表現は間違ってると思う。
だってあたしは、雄大にお金を渡していないのだから。
受け取らないのは、雄大に迷いがあるから。
雄大のバイト代だけではきっと賄えない額。
あたしの家賃と称したお金は、不可欠だと思う。
「もしかして、よりを戻すの?」
その言葉に黙って首を横に振る。
「それはない。
ありえない、お互いそれはちゃんと分かってる
だからこそあいつは、自分がしたことを償うって」
それはつまり、彼女が自分でお金を返すということか。
あたしは胸を撫で下ろした。
雄大の負担が少しでも軽くなってよかった。
これ以上は話すこともないだろうと思い、あたしはソファから腰をあげた。
お茶のおかわりをしようかな、とコップをつかんだ瞬間。
パシッ
逆の手から感じる温もり。
雄大の手があたしの手をとらえていた。
「え、どうしたの?」
驚きながら、言葉をはっする。
「お前は…香織はどこにも行かないだろ?」
え……
それはどうゆう意味?
そんな顔を向けられたら、触れられた手からドキドキが伝わりそうだ。
雄大の真意がわからないまま、あたしは固まった。
なんて返したらいい?

