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「俺は知らなくてさ、ずっと。
 周りが気にして俺にその噂を一切言わなかった

 だから気づけなかった…


 あいつが他の男とも付き合ってることを。
 しかも、俺の方が浮気相手だってこともさ…


 それを知ったのは、あいつが卒業したあと
 他クラスのやつが思わず口を滑らせて

 あいつさ、俺の周りのやつが何も言わないのをいいことに、金を巻き上げてたらしい
 なんでそこまでして、俺に言わなかったのか?
 って問い詰めたよ。

 友達の幸せを奪いたくないって

 そんな綺麗事だよな…

 クラスの全員が受けたわけじゃない
 そうゆうことを言えなさそうなやつを狙ってたんだ

 俺はそれに気づくこともできなかった」



友達も、ずっと大切に思ってた人まで失った。

投げやりに吐き出された言葉。


みんなが雄大を思ってしたことが、こんな結果に繋がってしまった。

悔やんでも悔やみきれないだろう。


そのお金を返すために、あたしに家賃として2万って言ったんだ。


「好きだったのに…騙されてさ

 当時から俺を心配してた綾子はそれで少しおかしくなっちまった
 離れてくクラスメイトと俺との板挟みでストレスがたまって
 紗弥加に殴り込みにいったんだ」


彼女ならやりかねないだろうな。

別れたいまでも、雄大を追っているのだから。


それだけ好きで、好きでしょうがないんだろう。


「もう恋なんてしない。
 周りを苦しめるくらいならって、綾子を遠ざけて、地元から離れた…

 って言ってもこの家は元々、親父の所有物だから自立したなんて言えないけどね」


「え、じゃあ」


「うん。
 家賃なんてのは親父が払ってる

 初めから騙してたんだ、香織のこと」


その言葉であたしは一気に涙が溢れた。

今どれだけ雄大が辛いのかなんてわからない。

だけどそうしないと、きっと雄大の心がつぶれそうだったんだろう。


あたしの考えも綺麗事。

だけどさ、その優しさは嘘じゃない。

本当にひどい悪人なら、そんなこと言わないでだまし続けてたよね。



「ごめん、香織…」


かすれた声に抱き締めたくなる。


でも、そんなことはできるわけもなくて。


あたしはただ、雄大を見つめる。