そうやって、少しづつだけど気分をまぎらわせながら、バイトを終えた。
帰りはいつものように、タクマ先輩と一緒。
「香織ちゃんさ、たまには相談とかしてあげてね?」
「え!?」
「俺はいいんだけどね、ユリさんたち、心配性だからさ」
「あ、はい…」
その気持ちは痛いほど分かる。
だからさっき、少しだけユリさんに聞いたんだ。
あたしだって、無理なのはわかってる。
そんなことできるなら、世界中の人が困らないと思う。
あたしが聞いたのは、
“今好きな人を、嫌いになることはできますか?”
そんなことしたら、みんな簡単に人を嫌いになる。
だから、無理なんだよね。
だけどあたしは、どうしたらいい??
「あっ!!そういえば俺、思い出したことあるんだ」
タクマ先輩の声が響く。
こちらにクルンと向きを変え、そうだそうだと言いながら、言葉を放つ。
「こないださ、香織ちゃんといた男の人…俺やっぱ見たことあった」
えー一!?

