「おはよう、香織ちゃん」
「あ、おはようございます」
着替え終わったタクマ先輩があたしのもとにやって来る。
「先輩、ケンさんに怒られてたでしょ?」
「あ、バレた?
店の中で大きな声出すなよ~、だって」
タクマ先輩はケラケラ笑いながらケンさんを見る。
ケンさんも人のことが言えない。
タクマ先輩みたいに大きな声で笑う。
あたしはそれが面白くて小さく笑った。
「そいえば、大丈夫?」
「なにが…」
ですか?
と、続かない言葉。
それは、タクマ先輩の後ろであたしを心配そうに見ているユリさんで察した。
タクマ先輩もきっと、気づいてるんだ。
あたしの目が、まだ少し赤いことに。
ヒリヒリした目からは、また少し涙が溢れてきそうになる。
「大丈夫ですよ」
あたしは笑顔を振り絞り、そう答える。
こんな風に心配してくれてるんだから、元気出さなきゃ。
よし、頑張ろう。

