こんなこと聞いたって仕方がないこと。
だけど、聞かずにはいられなかった。
「あれ、香織ちゃん!?今日は休みじゃなかったの?」
後からはいってきたタクマ先輩は、あたしがいることに驚いている。
あたしは、ふふっと笑って流した。
「タクマ、油売ってないで早くしたくしろー」
ケンさんの声でそそくさと着替えをしにいくタクマ先輩。
みんなが揃うと笑い声がたえない。
さっきのことだって、もうなんにも感じない。
そう思いたい。
“そんなこと、私はできないと思うわ”
ビクッ…
さっきのフレーズが、頭に響いた。
後ろを振り替えると、ケンさんと楽しそうに話すユリさん。
あんな悲しそうな顔を見たのは初めてだった。
きっと、あたしが困らせた。
あのときあたしが、そんな表情をしていたんだろう。
はぁ…
心のなかでため息をはく。
「おはよう、香織ちゃん」
「あ、タクマ先輩…」
気づくと着替えをすませたタクマ先輩が横にいた。
あたしはすぐに挨拶を返し、止まっていた手に気づく。
今食器をふいているんだからボーッとしたら危ない。
なんて言い聞かせながら、あたしはお皿をふく。

