こないだのストーカーちっくな人には好きじゃないとか、付き合ってないとか言ってたけど。
そんなの嘘だよ。
ずるいよ。
あたしと付き合ってまで、この人を守りたかったの?
あの女から守るために、あたしと付き合ったの?
分からないけど。
そうじゃないって否定してほしい。
でもさ、そんなの聞く勇気なんてないよ。
だって、気づいちゃったもん。
こんなの気づかないわけないんだよ。
ずるいよ…。
あたし、雄大のこと、好きになってたんだ。
だけど、しょせんはあたしたち偽りだからさ。
あたしって今、邪魔な存在?
「雄ちゃん、久しぶり…」
彼女は、あたしがいるのをためらってるみたいに、必要以上にあたしを見てくる。
邪魔者は退散しなきゃかな?
「あのさ、紗弥加…」
「雄大…」
雄大が彼女になにかを言おうとしたのを遮った。
「あたし、学校に忘れ物してた」
こんなところにいたくない。
「え、まぢで?」
「だから、取り入ってくる。」
精一杯の笑顔を向けた。
雄大は気づいてるかな?
あたしが無理してることに。
「あ……うん、」
きづかないよね?
たかが一ヶ月だし。
あたしたちの関係って、それくらい浅いもんね。
「じゃあ、ごゆっくり~」
あたしは急ぎ足でその場を去った。
どうせなら気づかなきゃよかった。
すきなんて、思わなかったらよかった。
溜まりにたまった涙は、あたしの頬を流れ落ちる。
拭っても、拭っても、止まらなくて。
苦しくて、苦しくて。
かもしれない。
なんかじゃなくて。
好きなんだよ。
あたしはそのまま駆け足で、駅へと向かった。