好きとかじゃない。
たぶん。
いや、きっと。
頭のなかで色々と言い訳しながら、あたしはとぼとぼと帰り道を歩く。
前には雄大。
なにも話そうとしない彼に、安心感と不安感が募る。
聞きたいけど聞きたくない。
聞いたら、あたしは今の関係を維持できるのかな。
「あ、」
気づいたら、アパートの前についていた。
結局、なにも話さずに雄大帰宅しただけ。
はぁ、と声には出さずにため息をはき、一歩前へと出る。
一ボスッ
「ちょっ、なにいきなり止まって…!?」
目の前で止まる雄大の背中にぶつかった。
あたしは文句を言おうと、少し横にずれると、見知らぬ女の子が見えた。
誰?
それが知らない人の家の扉の目の前にいるならば、気にも止めていなかった。
だけど、その子がいるのは、雄大の家の前。
「雄大?」
誰なの?
そう聞こうとしたけど、あたしは口を閉じた。
女の勘が言うんだ。
そもそも、あたしにそんなもんそなわってるのか分からないけど。
あの人だ。って、胸が騒ぐんだ。
「…紗弥加………」
こうゆう時にだけ、働く嫌な勘。
キュッと、唇を結び、あたしは雄大の反応を待つ。
なにも言わない。
だってわかるもん。
今の雄大の反応を見たら。
嫌でもわかってしまう。
あぁ、彼女のことがすきなんだって。
愛おしいような、切ないような、そんな表情。
あたしまで苦しい。

