「なんかさ、いきなりフライングだよね」
「たしかに。
偽装で付き合ってて好きになっちゃうとか」
「さらには、相手には元カノ?的な影ありだし」
またみんなは勝手に盛り上がる。
あたしの気持ちなんてお構いなしに。
まだ、好きだと断定してる訳じゃないのに。
「香織、あたしたちはあんたの味方だからね?」
ガシット肩を捕まれたかとおもえば、同情の眼差し。
「別に、雄大のことなんて」
「俺がどうした?」
好きじゃないもん。
言いかけた言葉が喉の奥に戻っていく。
後ろを振り向けば、噂の張本人である雄大の姿。
一ドキッ
いや、ドキッてなんだよ。
その姿が目の前にあるだけで、ハラハラする。
「香織、帰りいい??」
「あ、うん…」
話せば、またドキドキする。
「お、じゃあサンキュ」
右手をヒラヒラとさせながら、遠ざかっていく雄大。
分かってる。
みんなの視線が集まるのもわかるのに、あたしは雄大から目が離せなかった。

