家に帰る頃には、あたしの涙は収まっていた。
その代わりに、顔は最悪。
化粧はボロボロに落ちて、目は真っ赤だ。
顔洗ってこいよ、とい雄大の言葉に促されてあたしは洗面所に向かう。
「はぁ…こんな顔、」
見られんだ。
そう思うと、恥ずかしくなる。
雄大は気にも止めてなかったけど。
冷水で洗うとさっぱりする。
まだ目はヒリヒリするけど、だいぶ気持ちは落ち浮いた。
「雄大…、」
リビングに行くと、ソファに横になってる雄大。
呼び掛けても応答がない。
「寝てるの?」
傍によると、微かに寝息が聞こえる。
疲れてるのかな。
起こすのは可哀想だから、このまま寝かしてあげよう。
と、あたしの部屋からタオルケットを一枚持ってきて、雄大にかけた。
「………」
白くて綺麗な肌だな。
少し長いまつげにかかるサラサラな髪。
こうして寝てるところを見れば、本当にかっこいい。
“てめぇ!!香織になにしてんだよ”
あんな風に守ってくれるなんて思わなかった。
あたし、雄大にとったら知り合いとかそんな程度の存在だと思ってたから。
だけど、違った。
ごめん、と謝る雄大が頭をよぎる。
息を切らしながらあたしを探してくれた。
トクン……
触れちゃいけないのに、その殴られた頬にそっと触れたくなる。
ドキン、ドキン、と高鳴る心臓。
うるさいくらいに、脳に響いてくる。
この距離は近いけど、触れてはいけない。
あたし…。
触れられないこのもどかしさに耐えかねて、あたしは涙か落ちる前にベッドにもぐらはこみ、眠りについた。

