それでも、駅から10分ほどで雄大宅へとつく。
「はぁ…」
なんてため息を漏らす。
ジメジメとした空気があたしをさらに憂鬱にさせる。
この扉を開けたら、雄大がいる。
毎回のことだけど、重たくのしかかる。
だけど入らなきゃ。
ここしか、あたしの帰る場所はないんだから。
「香織?」
ドキッ…。
ドアノブに手をかけたところで、あたしを呼ぶ声が横からした。
「あ、雄大……」
「なにしてんの?」
「…いや、今帰ってきたところだから」
あたしは目を合わさずに、扉を開いた。
「香織、なんかあったの?」
雄大は、優しい。
なんだかんだ言って、性格は俺様だけど、困ってる人が放っておけるような性格ではない。
「なんもないよ。」
雄大がどう思ってるのか、あの人はなんなのか、いくらあたしだって気になるよ?
それくらい雄大は分かるでしょ?
そんなすました顔であたしを見てきて。
あ、ムクツク、こいつ。
なんて、威嚇体制にはいるあたしはまだまだ子供だ。

