「とにかく、もう俺に関わるな。」
そう吐き捨てると、そのままあたしを家へと連れ去った。
隙間から彼女を見てみると、涙をこらえ恨めしそうにあたしを見ている。
そんな彼女を見ながら、ある疑問がわいた。
“まぁ、ちょっとした理由があるんだよ”
そう言っていたこないだのことを思い出していた。
なんとも複雑そうな顔をしていた気がする。
理由って、あの人と関係あるの?
「あ~、もう…」
家に入ると、無造作に鞄を放り投げ、ソファに寝転がる雄大。
その様子をあたしは黙ってみていた。
「悪いな、変なこと巻き込んで。」
こちらを見ようともせずに、謝る雄大。
なんだか変だ。
胸の中がモヤモヤする。
あたしは、別に、とだけ答えて自分の部屋に向かう。
たぶん、雄大は教えるつもりがない。
付き合ってるなんて表面上で、あたしたちは好きあってるわけじゃないし。
だから、そこまで深く入り込もうなんて思わないけど。
何だかモヤモヤは取れないままで。
あたしは、今日出された課題を開いたり閉じたり。
勉強なんて手につかないまま。
気づいたら、隣の部屋からはいい匂いがし始めた。
雄大が朝みたいにご飯を作り始めたんだ。
そのうち出来たみたいで、あたしのことを呼ぶ声。
あたしはなにもなかったかのように、部屋から出ていき、雄大とご飯を食べる。
これがあたしたちの距離だ。
あたしたちの数日で築いたものなんてこんなもんだ。