「今日って何の日?」



彼にそう聞かれて考える。

今日は別に祝日でも、行事があるわけでもない。

ただ、誰かさんの誕生日ってだけで。

だから私は迷わず。



「何かある日なの?」



そう問い返せば彼は少しいじけて、もういいと先へ行ってしまう。

そんな彼が可愛く思えてしまう私はもうだいぶ彼のことを思っているんだろう。

ずっといじけている彼を見ているのも良いけれど、やっぱり一番は彼の笑顔で。

笑った顔はすごくカッコいいと思う。

それは、ずっと独り占めしていたいくらい。



「何、にやけてんの」



そんなに顔が緩んでいたんだろうか。

でも彼のことを考えるだけで幸せで。

いじけても結局はこうして話し掛けてくれる彼のそんな所も好きで。

だから、少し遅れてから言うんだ。



「誕生日、おめでとう」

「っ!!…」



私の言葉に驚いて凄く嬉しそうに笑う彼の顔は私だけしか知らない。

そんな自分勝手な私の我が儘に付き合わせている彼にはそのうちちゃんと“ありがとう”と言うべきだろう。

私の一言でこんなにも喜んでくれるのなら、何度でも君に。






「大好きだよ」