「…はぁ…。」

暗い部屋から聞こえてくるため息。 カーテンはしめきっていて、光りはひと筋もはいらない。


誰もいない部屋の中、あたしはひとりぽつりとため息をこぼした。


また、思い出した。 初めて人に虚を突かれたあの日のこと…。

さっきこぼしたため息は、どんな意味があったのか、自分でもわからない。


自分でしたことなのに、感情が読めないなんて。


…めずらしいな…。 こんなこと、滅多にないのに。


…まあいいか。 しばらくすればいつものように…

『ポタ…』

…?

なにかがあたしの腹からこぼれ、したに『ピチャッ』と音をたてておちた。









どうやら、さっきこぼしたのはため息だけじゃなかったらしい。


『ポタ…ポタポタ…』



床に次々と音をたてておちてゆくのは、


真っ赤なあたしの『血』 だった。