風間さんは少しだけ、と言った。

しかしそれ以上は何も言わなかったので、俺は思い当たる不機嫌の理由を話した。そして彼女の言いたい気持ちがわからないと。


風間さんは少し考えるような表情をしてから言った。



「真琴様は“夫婦”を…伊織様を“夫”として意識されています。」

「?俺だって彼女を妻として…」

「本当にそうでしょうか?」



風間さんのセリフにドキッとした。



「どういうことですか?」

「真琴様が肇様に声をかけられていても、伊織様は“妻だから”と安心されていた。もちろん、相手が肇様だからというのもあるでしょうが…」

「だから俺は政略結婚であってもちゃんと結婚を意識して…」

「伊織様が意識されていたのは紙面上で保証されているということだと思います。」

「え?」