真…琴…?
「伊織…」
俺の名前を呼んで…?
「泣いているの…?」
ソッと声をかける。その声に弾かれたように顔を上げてこちらを見た。
大きな瞳は涙で溢れ、俺の姿を捉えると大きく見開く。
驚いたその瞳からはまたポロリと涙が落ちた。
「泣かせてるのは俺だよな…。」
真琴の涙に困ってしまい苦笑する。
泣かせているのは俺だ。
「伊織…。」
どうして…と言いたげな顔だな。
「ごめん。やっぱり帰れなかった。」
顔を上げて真っ直ぐ真琴を見る。
今なら…話ができるかも知れない。
意を決して真琴に伝える
「真琴。話…聞いてほしい。」
ゆっくりと近づく、
しかし今回は逃げずにいてくれた。
思わずホッと息をつく。
「…春香とのこと。」



