スーツ姿のままだったので、海風が少し冷える。

ポケットに手を入れて空を見上げると星が綺麗だった。


そっと深呼吸をする。


その時。



「どうして…」



仕事が終わって出てきた真琴が俺を見て呟いた。
真琴に気が付き向き合うと、真琴の隣に昨日の男が居るのに気が付いた。

真琴…、やっぱり…。



「真琴…」



名前を呼ぶと、ピクッと肩を震わせ黙って俺の横を通り過ぎようとする。


「真琴っ」



とっさに真琴の華奢な細い腕を掴む。

…が、それは真琴によって振り払われた。



「帰って。もう…二度と会わない…」



低く、緊張した、しかし感情を抑えたような声。