「伊織様。旦那様からお電話でございます。」 部屋の外からお手伝いさんが声をかけてきてハッとする。 「ありがとう」 受け取ったはいいが、正直出たくない。 こっそり溜め息をついてから受話器をあてた。 「お待たせしました。伊織です。」 『見合い相手は決めたか?』 開口一番それかよ。 数日前、息子が誕生日だったんだからおめでとうくらい言えばいいのに。